2006.01.20

ACE阻害剤は進行した腎不全患者の腎臓保護にも有効、中国の研究

 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤は、糖尿病の有無にかかわらず、軽度から中等度の腎不全患者(血清クレアチニン値3.0mg/dL以下)に対して腎臓保護効果を持つことが示されている。が、クレアチニン値がより高い、進行した腎不全患者に対するACE阻害剤の効果は明確ではなかった。中国南方医科大学のFan Fan Hou氏らは、通常の降圧治療とACE阻害剤のベナゼプリルを併用すると、降圧治療のみに比べ、血清クレアチニン値の倍加、末期腎臓病への移行、または死亡という複合エンドポイントの発生を43%抑制できることを示した。詳細は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌2006年1月12日号に報告された。

 著者たちは先に、小規模なオープンラベルの試験を行い、ベナゼプリルは、糖尿病の有無にかかわらず、進行した腎不全患者にも腎臓保護効果を与えられることを示す結果を得ていた。そこで今回は、無作為割付の二重盲検試験により、非糖尿病性の進行した腎不全患者に対するベナゼプリルの有効性と安全性の評価を試みた。

 対象となったのは、18〜70歳の非糖尿病性の慢性腎疾患患者計422人。血清クレアチン値が1.5-5.0mg/dL、クレアチン・クリアランスが体表面積1.73平方メートルあたり20-70ml/分、持続的蛋白尿(尿路感染または明確な心不全なしに0.3g/日超が3カ月以上持続)を条件とした。これらの患者を血清クレアチニン値により2分、1.5-3.0mg/dLの患者104人をグループ1、3.1-5.0mg/dLの224人をグループ2とした。

グループ1についてはACE阻害剤の有用性が証明されているため、倫理的見地から偽薬群を設けず、全員に20mg/日投与を投与。グループ2はさらに2等分し、ベナゼプリル20mg/日または偽薬を投与した。必要に応じて全員に通常の高血圧治療(ACE阻害剤およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬を除く)を実施。また、全員に、塩分と蛋白質、カリウムの摂取を減らすよう指導した。追跡期間の平均は3.4年となった。

 主要エンドポイントは、血清クレアチニン値の倍加、長期的な透析または腎臓移植が必要な末期腎臓病への移行、死亡からなる複合アウトカムの最初のイベントに設定。二次エンドポイントは、蛋白尿のレベルおよび腎疾患進行速度(血清クレアチニン値、クレアチニン・クリアランス、糸球体濾過量を指標とする)とした。

 主要エンドポイントの評価が可能だったのは、グループ1の102人と、グループ2の治療群107人、偽薬群108人。血清クレアチニン値の倍加、末期腎臓病への移行、死亡のいずれかが見られた患者は、グループ1が22人(22%)、グループ2では治療群44人(41%)、偽薬群65人(60%)(治療群と偽薬群を比較した場合のp=0.004)。グループ2では、偽薬群に比べ治療群のイベント・リスクは43%低かった(p=0.005)。この利益は、血圧で調整後も維持された。なおグループ1とグループ2の治療群を比べると、同じ用量でも、より軽度の患者からなるグループ1の方がアウトカムは良かった(p=0.003)。

 主要エンドポイントの個々のイベントについて評価したところ、偽薬群に比べ、治療群では、クレアチニン値の倍加リスクは51%低く(p=0.02)、末期腎臓病への移行のリスクは40%少なかった(p=0.02)。

 2次エンドポイントについても、ベナゼプリルの効果は有意だった。蛋白尿減少は、治療群52%、対照群20%(p<0.001)。血清クレアチニン値に示される腎機能低下の速度は治療群の方が23%遅く(p=0.02)、糸球体濾過量の低下も24%抑制された(p=0.006)。、また、グループ2の治療群と偽薬群の間で、副作用の発生頻度に差はなかった。

 血圧は全群で良く管理され、治療開始から同様に低下し、値に有意差はなかった。これは、ACE阻害剤の効果は、降圧作用とは直接関係しないことを示唆する。

 論文によると、進行した慢性腎疾患患者の85%は腎臓保護治療を受けていない。今回、必要に応じて通常の降圧治療を行い、そこにベナゼプリルを加えると、そうした患者にも腎臓保護効果を与えられることが明らかになった。

 本論文の原題は「Efficacy and Safety of Benazepril for Advanced Chronic Renal Insufficiency」。アブストラクトはNEJM誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2004.10.11 ACE阻害剤とAIIRAsの糖尿病性腎症に対する効果:系統的レビュー
◆2004.9.1 軽度腎機能低下の2型糖尿病に対するARBとACE阻害薬の有用性は同等

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