2006.01.17

魚180gを毎日食べると週1回に比べて心筋梗塞リスクが半減

 西欧で行われた研究では、魚を週に1〜2回(1日30〜60g)食べると、冠動脈疾患と心臓突然死のリスクが減少すると報告されている。が、日本人のように、魚を高頻度、大量に食べる集団を対象に、初回冠疾患イベントのリスクと魚摂取量の関係を調べた研究はほとんどなかった。大阪大学の磯博康氏らが、40〜59歳の日本人男女4万人超を対象に、魚介類の摂取と冠疾患リスクの関係を調べる前向き研究を行ったところ、1日平均23gを摂食している群に比べ、1日平均180gを摂っている群では、全心筋梗塞リスクは53%低く、非致死的冠イベント・リスクは57%低いことが明らかになった。詳細は、Circulation誌電子版に2006年1月9日に報告された。

 日本人は、成人の95%が少なくとも週1回は魚を食べ、魚介類の平均摂取量は約100g/日と多い。冠疾患の致死率は、西欧では約50%と報告されているが、日本では25%程度と低く、日本人を対象とする研究の必要性は高かった。

 そこで著者たちは、日本の各地域の保健所を基盤とするJPHC(Japan Public Health Center-based )研究のコホートを対象に、魚介類の摂取と冠疾患リスクの関係を評価した。同時に、魚介類を介したn3系多価不飽和脂肪酸(エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸)摂取量と、冠疾患リスクについても調べた。n3脂肪酸は、抗不整脈効果のほか、血小板凝集を抑制、血液の粘性を下げ、血圧を下げるなど様々な作用を持つ。

 岩手、秋田、長野、沖縄の4つの保健所に登録された、心臓血管系疾患およびがんでない40〜59歳の男女4万1578人を1990〜1992年から2001年まで追跡した。47万7325人-年の追跡で258人が冠疾患を発症、うち198人が心筋梗塞、23人は心筋梗塞可能性例(心電図、心酵素、および/または剖検で確認されていない)、37人は心臓突然死、全死亡は62人だった。

 食品摂取頻度を尋ねた質問票に対する回答に基づいて、魚介類摂取量(g/日)で対象者を5分(それぞれ摂取量の中央値は23、51、78、114、180g/日)した。

 その結果、多変量(年齢、性別、喫煙、飲酒、BMI、高血圧、糖尿病、高脂血症治療、野菜果物の摂取、脂質の摂取、総熱量など)調整後も、全心筋梗塞(傾向のP値は0.03)、診断が確定した心筋梗塞(同0.03)、非致死的冠イベント(同0.02)と魚介類摂取量との間に有意な逆相関関係が見られた。

 最も多く魚介類を摂取している群と最も少ない群を比較したところ、多変量調整後のハザード比は、全心筋梗塞が0.47(0.26-0.85)、診断が確定した心筋梗塞0.44(0.24-0.81)、非致死的冠イベント0.43(0.36-0.81)で、それぞれ有意なリスク減少が認められた。一方、全冠疾患0.63(0.38-1.04)、心臓突然死1.14(0.36-3.63)、致死的冠イベント1.08(0.42-2.76)には、有意差は見られなかった。なお、男女別に分析すると、有意ではないが、男性の方が女性に比べ魚摂取の効果は大きい傾向が見られた。

 次に、摂取した魚介類の量と内容に基づいてn3脂肪酸の摂取量を推定し、その値をもとに対象者を5分した。同様に、最も多い群(摂取量の中央値は2.1g/日)を最も少ない群(同0.3g/日)と比較したところ、多変量調整後のハザード比は、全冠疾患0.58(0.35-0.97)、全心筋梗塞0.43(0.24-0.78)、診断が確定した心筋梗塞0.35(0.18-0.66)、非致死的冠イベント0.33(0.17-0.63)で、有意なリスク減少が示された。心臓突然死1.24(0.39-3.98)、致死的冠イベント1.54(0.60-3.99)については有意ではなかった。

 2003年の厚労省調査では、日本人の魚介類摂取量は、40〜49歳で1日平均93.2g、50〜59歳では105.5gだった。これは、今回の集団では第2五分位群に相当する。この群では、多変量調整後には統計学的有意なリスク減少が見られなかった。刺身1切れが約15g、魚の切り身1切れは約80g、となれば、夕食以外にもう1食、魚料理を食べることで最高五分位群入りが可能になる。ただし、魚に含まれる水銀やダイオキシン、調味に用いられる塩分などの摂取増には注意した方がよさそうだ。

 本論文の原題は「Intake of Fish and n3 Fatty Acids and Risk of Coronary Heart Disease Among Japanese. The Japan Public Health Center-Based (JPHC) Study Cohort I」。アブストラクトはCirculation誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2005.10.14 妊娠中に水銀が少ない魚をたくさん食べると子供が賢くなる、米国の研究
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◆2004.7.22 焼き魚は脳卒中の原因「心房細動」を予防する?!−−米国CHS研究から判明
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