2006.01.17

植物性たんぱく質の摂取量と血圧は逆相関する、日中英米の国際研究で明らかに

 これまでに行われた疫学研究や実験の結果は、たんぱく質の摂取量と血圧が逆相関することを示唆していた。英ロンドン大学のPaul Elliott氏らは、4カ国の17集団を対象に、植物性たんぱく質、動物性たんぱく質、総たんぱく質の摂取量と血圧の関係を調べる横断的疫学研究を実施した。その結果、植物性たんぱく質の摂取量が多い人の方が、収縮期圧(SBP)および拡張期圧(DBP)は有意に低いことが明らかになった。詳細は、Archives of Internal Medicine誌2006年1月9日号に報告された。

 研究は、4カ国17集団(日本-4、中国-3、英国-2、米国--8)に属する40〜59歳の男性2359人と女性2321人、計4680人を対象とした。計4日間の調査で、SBPとDBPを8回測定。毎回、調査前24時間に摂取したすべての食物と飲料、サプリメント類を尋ねて記録した。7日間の飲酒量も調べた。24時間尿を2回採取し、ナトリウム、カリウム、尿素、クレアチニン、カルシウム、マグネシウムなどの値を測定した。

 SBPの平均は、4カ国のうち日本が最低(117.2mmHg)、中国が最高(121.3mmHg)。BMI、摂取熱量、動物性たんぱく質摂取量(摂取たんぱく質の熱量が総熱量に占める割合、%kcal)の平均は、中国が最低で、米国が最高だった。逆に植物性たんぱく質の摂取量の平均は、米国が最低、中国が最高だった。以下、植物性たんぱく質、動物性たんぱく質の順番で、各国の平均摂取量(%kcal)を示す。日本7.1と8.9、中国10.0と2.5、英国6.1と9.8,米国5.2と10.2だった。

 植物性たんぱく質の摂取と血圧の間の逆相関関係は有意だった。標本、年齢、性別で調整後、植物性たんぱく質の摂取量が2SD上昇(2.8%kcal多く植物性たんぱく質を摂取)すると、SBPは−2.72mmHg、DBPは−1.67mmHg。身長と体重を調整に加えると、SBP−1.95mmHg、DBP−1.22mmHg(ここまですべてp<0.001)となった。また、標本、年齢、性別、24時間尿中のナトリウムとカリウムの量、7日間の飲酒量で調整すると、SBPは−2.14mmHg、DBPは−1.35mmHg(いずれもp<0.001)、さらに身長と体重で調整しても、SBP−1.11mmHg(p<0.01)、DBP−0.71mmHg(p<0.05)で、引き続き有意だった。

 動物性たんぱく質の高摂取は、標本、年齢、性別で調整した段階では、血圧上昇と有意に関係していた。摂取量が2SD(5.85%kcal)上昇するとSBPは+1.55mmHg(p<0.001)、DBPは+0.68mmHg(p<0.05)となったが、身長と体重を調整に加えた時点で有意差は見られなくなった。

 次に、国ごとに、植物性たんぱく質摂取量が最高四分位群、動物性たんぱく質摂取量が最低四分位群に属する人々を選出した(計491人)。このグループは、総摂取熱量の9.1%を植物性たんぱく質から、4.3%を動物性たんぱく質から得ていた。反対に、動物性たんぱく質摂取量が最高四分位群、植物性たんぱく質摂取量が最低四分位群に属する人々(計471人)は、総熱量の5.4%を植物性たんぱく質から、12.0%を動物性たんぱく質から得ていた。両群の血圧を比べると、高植物性たんぱく質群の方がSBPは4.15mmHg(p<0.001)、DBPは2.15mmHg(p<0.01)低かった。

 18種類のアミノ酸の摂取量をこれらのグループ間で比較したところ、17アミノ酸の摂取量に有意差があった。高植物性たんぱく質群では、グルタミン酸、シスチン、プロリン、フェニルアラニン、セリンの摂取が多く、あとの13アミノ酸は高動物性たんぱく質群より少なかった。

 その他、植物性たんぱく質の摂取と高い相関を示したのは、総繊維摂取量とマグネシウム摂取量。動物性たんぱく質と高い相関を示したのは、コレステロール摂取量だった。

 さて、たんぱく質の総摂取量と血圧の関係について、女性には有意な関係は見られず、男性では身長と体重で調整した後でのみ関係は有意だった。過去に行われた研究の結果と一致しなかった理由について、著者たちは、研究方法や対象集団が違うためではないかと考えている。

 なお、植物性たんぱく質源は、米国人を例に取ると、パンやビスケット(全体の33%)、野菜(16%)、大豆および大豆加工品(15%)、米やパスタ(11%)、大豆以外の豆類(7%)、ナッツやナッツバターおよび種子類(6%)、果物とジュース(5%)、シリアル(2%)などだった。

 今回の結果は、植物性たんぱく質の摂取が血圧と逆相関することを示した。その理由は現時点では明らかではないが、植物性たんぱく質が豊富な食事は、高血圧および高血圧関連疾患の予防に有効であることをさらに確認したといえる。

 本論文の原題「Association Between Protein Intake and Blood Pressure」。現在、全文がこちらで閲覧できる(PDFファイル)。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2001.10.26 日本高血圧学会速報】大豆たんぱく質とイソフラボンの積極的摂取、血圧やコレステロールへの改善効果がRCTで示される


Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 25歳女性。外陰部の結節 日経メディクイズ●皮膚 FBシェア数:0
  2. 「研修医にやる気がない」「教えるとウザがられる」… 学会トピック◎日本病院総合診療医学会学術総会 FBシェア数:346
  3. 10歳男児。咽頭違和感、全身掻痒感、呼吸困難 日経メディクイズ●小児 FBシェア数:0
  4. 流行ウイルスはAH3? それともAH1pdm09… インフルエンザ診療Next:トピックス FBシェア数:163
  5. 「スポーツ98%です!」どういう意味か分かります… 倉原優の「こちら呼吸器病棟」 FBシェア数:0
  6. 頭をぶつけたが異常のない男児。CTを撮る? 医師1000人に聞きました FBシェア数:34
  7. 知ってた? 一円玉はX線画像に写らない! 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:200
  8. 50歳代男性。発熱、呼吸困難、左下腿疼痛 日経メディクイズ●胸部X線 FBシェア数:0
  9. 免許更新時、認知症の診断ができないケースとは プライマリケア医のための認知症診療講座 FBシェア数:16
  10. 抗菌薬の適正使用が最も進んでいる診療科は? 医師1000人に聞きました FBシェア数:57