2006.01.16

ロタウイルス・ワクチン2種の3相試験結果はいずれも安全性と有効性を証明、NEJM誌に発表

 ロタウイルスは、幼児および小児の下痢症関連疾患および死亡の主な原因のひとつになっている。全世界で、ロタウイルス感染により受診する5歳未満の患者は年間2500万人、うち200万人が入院し、60万人が死亡する。安全かつ有効なワクチンの開発は緊要だ。メキシコ国立医科学・栄養研究所のGuillermo M. Ruiz-Palacios氏らと、フィンランドTampere大学のTimo Vesikari氏らのグループは、それぞれ異なるロタウイルス・ワクチンの安全性と有効性を評価する3相試験を実施し、重症の胃腸炎の予防効果が90%前後と、いずれも非常に有望な結果を得た。2つの研究成果はいずれも、New England Journal of Medicine(NEJM)誌2006年1月5日号に報告された。

 2件の3相試験はどちらも、腸重積症を中心とする副作用の評価に力を入れた。これは米国で1998年に発売された4価ロタウイルス・ワクチン「RotaShield」(Wyeth Laboratories社)が、投与後の腸重積症発生を理由に、1999年に自主回収されたことが原因となっている。

 1本目の論文の著者であるRuiz-Palacios氏らは、2相試験でも重症のロタウイルス性胃腸炎に対するワクチンの予防効果は90〜100%という結果が得られていたが、腸重積症や他の副作用について分析するためには、さらに大規模な臨床試験が必要だったと述べている。

 同氏らが用いたワクチンは、GlaxoSmithKline社が開発した「Rotarix」で、ロタウイルスのうち、血清型がG1P8]型のRIX4414株からなる弱毒化生ワクチンだ。無作為割付の二重盲検試験は、中南米11カ国とフィンランドの健康な幼児6万3225人を対象に行われた。ワクチン群(3万1673人)と偽薬群(3万1552人)に分け、生後2カ月と4カ月の時点で、計2回、経口投与した。副作用は、初回投与から100日間、全員を対象に積極的サーベイランスを行うことで評価。有効性については、サブグループ2万169人(ワクチン群1万159人、偽薬群1万10人)を9〜10カ月追跡して評価した。

 問題の副作用だが、初回投与から100日間の観察期間中に、ワクチン群9人、対照群16人が腸重積症を発症した(p=0.16で差は非有意)。2回の投与からそれぞれ31日間の発症はワクチン群6人、偽薬群7人で、有意差はなかった(p=0.78)。深刻な副作用はワクチン群で有意に少なかった(p=0.005)。全死亡率に有意差はなかった(p=0.20)。

 主要エンドポイントは、生後1年間の重症ロタウイルス性胃腸炎に対する予防効果に置かれた。2回目の投与の2週後から1歳の誕生日までの間に、ワクチン群の12人、偽薬群の77人が重症のロタウイルス性胃腸炎を発症、予防効果84.7%(p<0.001)が明らかになった。これらの患者の中で入院が必要だったのはワクチン群9人、対照群59人で、入院予防効果は85.0%(p<0.001)。特に重症(最高が20ポイントに設定されているVesikariスコアが19または20)のロタウイルス性胃腸炎のみを対象とすると、ワクチンの予防効果は100%になった。なお、ワクチン投与は、あらゆる原因の下痢による入院も42%抑制した(p<0.001)。

 ウイルスの血清型に特異的な有効性を調べたところ、ワクチンが標的とするG1P8]については91.8%、P8]抗原を持つG3P8]、G4P8]、G9P8]に対する有効性は87.3%で有意となった。ワクチン株とはG抗原もP抗原も一致しないG2P4]については41.0%だったが、p=0.3で非有意だった。この結果は、ワクチンが、中南米で流行の中心となっている血清型のウイルスに有効だったを示している。以上の結果は、弱毒化生ワクチンの有効性と安全性を示した。

 Ruiz-Palacios氏らの論文の原題は「afety and Efficacy of an Attenuated Vaccine against Severe Rotavirus Gastroenteritis」。アブストラクトはNEJM誌Webサイトのこちらで閲覧できる。 

 この「Rotarix」は、2004年7月にメキシコで市販許可を得た。続いて、ブラジルを含む中南米12カ国と、フィリピン、シンガポールなどでも承認を得ている。欧州でも2006年2月末には市販許可獲得見込みとなっている。

 2本目の論文は、Merck社が開発した「ROTATEQ」の3相試験結果を報告したものだ。このワクチンは、ロタウイルス性胃腸炎の患者から高頻度に検出されるウイルスが、血清型G1P8]、G2P4]、G3P8]、G4P8]であることに基づいて開発された。世界の症例の80%は、これらの血清型のウイルスの感染によるという。こちらは、ウシ・ロタウイルス(WC3株)を親株とし、ヒト・ロタウイルスの血清型G1、G2、G3、G4および P8]を個々に重感染させて、これらの抗原蛋白質をコードする遺伝子分節を取り込んだ5通りの再集合体ウイルスを作製、混合した、5価の弱毒化生ワクチンだ。

 Vesikari氏らも、腸重積症その他の副作用の発生率を調べ、ワクチンの効果を評価するとともに、ヘルスケア・リソースへの影響も推測した。

 欧米アジアなど11カ国で行われた試験の対象は、生後6〜12週の健康な小児6万8038人。無作為にワクチン群(3万4035人)と偽薬群(3万4003人)に割り付け、4〜10週間隔で3回、経口投与を実施。3回の投与を完了、それから42日後まで追跡できた幼児は5万9210人、初回投与から1年後まで追跡できたのは5万6310人だった。副作用その他のイベントの発生を調べるため、積極的サーベイランスを行った。

 初回投与から1年間に、腸重積症を発症したのは、ワクチン群12人、対照群15人。各回の投与から42日以内だったのは、ワクチン群6人、対照群5人で、差は有意でなかった。深刻な副作用は、ワクチン群803人(2.4%)、対照群859人(2.5%)に見られた。死亡はワクチン群24人、偽薬群20人で、いずれも0.1%未満。また、ワクチン接種に関係する死亡はなかった。

 9605人(ワクチン群4806人、偽薬群4799人)を対象に有効性を評価した。ワクチンは、3回目の接種後2週間を経た日から、初回投与の1年後までの間の、G1-G4型ウイルスによる胃腸炎が原因の入院と救急部門の受診を94.5%(91.2-96.6%)減らした。

 さらに、4512人(ワクチン群2207人、対照群2305人)を対象に、ワクチン接種以降、最初のロタウイルス流行期におけるG1-G4型ウイルス感染による胃腸炎の発症率を調べた。その結果、ワクチンの発症予防効果は74.0%が示された。重症の胃腸炎に対する予防効果は98.0%だった。G1-G4型ウイルスによる受診を減らす効果は86.0%となった。2回目の流行期には、ワクチン群813人、偽薬群756人について評価が可能だった。G1-G4型による胃腸炎の予防効果は62.6%、重症の胃腸炎の予防効果は88.0%だった。

 ヘルスケア・リソースについては、子供の発症による親の欠勤についても評価した。ワクチン群では欠勤は65日、偽薬群では487日となり、ワクチンの効果は86.6%となった。

 以上の結果は、ワクチンは、ロタウイルス性胃腸炎の予防に有効であり、腸重積のリスクは偽薬投与群と同等であることを示した。

 こちらの論文の原題は「Safety and Efficacy of a Pentavalent Human-Bovine (WC3) Reassortant Rotavirus Vaccine」。アブストラクトはこちらで閲覧できる。

 「ROTATEQ」は、2005年末に米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会から承認推薦を得ており、正式な市販許可が降りれば、この製品が米国で唯一のロタウイルスワクチンになる見込みだ。Merck社は米国以外にも既に50カ国で市販許可申請を提出している。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


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