2006.01.16

筋収縮のカルシウム感受性の制御で遺伝性の特発性心筋症は新予防・治療法の可能性、東京医歯大グループ

 東京医科歯科大学難治疾患研究所教授の木村彰方氏(写真)らの研究グループは、遺伝性の特発性心筋症の患者の遺伝子の突然変異を解析することで、筋収縮のカルシウム感受性を制御すれば、新しい予防・治療法の開発につながることを明らかにした。遺伝子を修飾することで、カルシウム感受性が亢進し、心肥大を起こすマウスの作製にも成功しており、カルシウム感受性亢進を抑える薬剤の開発にも利用できそうだという。カルシウム感受性を高める薬剤は海外で既に見出されているという。

研究成果は1月14日に都内で開催された日本成人病(生活習慣病)学会のプレナリーセッション「テーラーメイド医療の実現に向けて」で発表された。木村氏は、多数の遺伝子の突然変異の研究から共通の機能変化を見出し、それに着目すれば新たな予防・治療法が開発できることを指摘したことになる。

 木村氏は、特発性心筋症の主な病型である肥大型心筋症(HCM)と拡張型心筋症(DCM)の遺伝子突然変異について説明した。HCMは心室が肥大し心室の拡張障害を起こす疾患で若年者の突然死を引き起こす。500人に1人の割合で存在し、遺伝によるものが50%から70%を占めている。DCMは心室が拡張し、心室の収縮障害を起こし、進行性の心不全、突然死を引き起こす疾患だ。HCM、DCMともに心筋トロポニンや心筋βミオシン重鎖など十数種類の遺伝子に変異があり、どの遺伝子に変異があるかによって予後が異なっている。また同一の遺伝子でも変異の場所によって予後が異なるという。

 木村氏はミオシン重鎖やトロポニンTなどでの変異によって、HCMでは筋収縮のカルシウム感受性が亢進し、DCMではカルシウム感受性が低下していることが自らの実験や他のグループの実験から明らかになっていることを説明した。

 また、木村氏らは、心筋サルコメアを構成しているタイチンと呼ばれるたんぱく質には、HCM、DCMのどちらの患者でも変異が見つかることを明らかにしている。HCM患者でタイチンのZ帯部分に変異が起きている場合には他の因子との結合が低下し、ゆるい状態のサルコメアになることを見出した。DCM患者でタイチンのZ帯部分にに変異が起きている場合には、逆に他の因子との結合が強固となり固い状態のサルコメアになることが分かった。木村氏らはサルコメアがゆるくなって、引っ張り反応が低下すると筋収縮のカルシウム感受性が低下し、固くなって引っ張り反応が亢進するとカルシウム感受性が亢進することを確認、タイチンの変異もカルシウム感受性と関連することを見出した。

 さらに木村氏らは頻度は低いが高血圧性心筋症でBMP10に変異が存在している場合があることも報告した。変異BMPは細胞外分泌が亢進し、ラット心筋細胞を使った実験で心肥大化につながることを示した。(横山勇生)

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