2006.01.13

夜間降圧度が小さいか夜間昇圧型だと脳梗塞リスクが高い――大迫研究から

 覚醒後の血圧の急上昇(モーニングサージ)の程度や夜間の降圧レベルと、脳卒中リスクの関係を調べる研究は複数行われているが、一致した結果は得られていない。そこで、岩手県大迫町の住民を対象に、モーニングサージや夜間降圧度と、全脳卒中および脳卒中のサブタイプとの関係を調べたところ、モーニングサージと全脳卒中および脳梗塞、夜間降圧パターンと全脳卒中リスクとの間には有意な関係が認められなかった。しかし、早朝高血圧または夜間降圧度が大きい人の頭蓋内出血リスクは高く、夜間降圧度が小さいか夜間昇圧型だと脳梗塞リスクが高いことが分かった。詳細は、Hypertension誌電子版に2005年12月27日に報告された。

 今回の研究は、岩手県大迫町で1987年から行われている横断的観察研究の一環として、東北大学医学部の目時弘仁氏らが実施した。40歳以上の1430人(平均年齢61.1歳)を平均10.4年間追跡。対象者の自由行動下血圧を測定(平均は123/72mmHg)し、収縮期圧(SBP)を基にモーニングサージ(起床後2時間のSBPの平均-起床前2時間のSBPの平均)と、夜間降圧度((昼間SBP-夜間SBP)×100/昼間SBP)を計算。夜間降圧のサブタイプを以下のように分類した。夜間降圧度が20%以上をextreme dipper、10-19%をdipper、0-9%をnondipper、夜間に血圧上昇が見られる場合をinverted dipper。

 初回脳卒中は128人に見られた。うち86人(67%)は脳梗塞、27人(21%)は頭蓋内出血、10人(8%)はくも膜下出血、4人(3%)は一過性脳虚血性発作(TIA)、1人についてはタイプ不明だった。

 脳卒中リスクと血圧日内変動パターンの関係を交絡因子候補で調整後、Cox比例ハザード・モデルを用いて分析した。モーニングサージのレベルに基づいて対象者を5群にわけた。モーニングサージと全脳卒中リスクおよび脳梗塞の間には、有意な関係は認められなかった。が、頭蓋内出血は最高五分位群(25mmHg以上上昇)で有意に多かった。第2五分位群(上昇が3mmHg以上11mmHg未満)と比べた場合の相対ハザードは4.0(95%信頼区間1.08-14.63)だった。

 夜間降圧のタイプと全脳卒中リスクの間にも有意な関係は見られなかった。が、extreme-dipperの頭蓋内出血リスクは高く、夜間降圧が20%未満のグループと比べた場合の相対ハザードは2.69(1.14-6.36)だった。線型モデルにおいて、頭蓋内出血リスクは夜間降圧度が増すにつれて有意に上昇、1SD増加あたりの相対ハザードは1.89(1.02-3.48)になった。また、inverted-dipperとnon-dipperには、脳梗塞リスクが高い傾向が見られた。これらを合わせて、dipperとextreme-dipperをあわせたグループと比較すると、相対ハザードは1.59(1.03-2.46)となった。

 得られた結果は、頭蓋内出血および脳梗塞リスクを減らすためには、降圧治療の標的をどこに設定すればよいかを示唆した。

 研究者たちは、これまでに行われた研究の結果にばらつきが見られる理由の一つとして、対象集団に差があることを挙げている。脳卒中の予測因子としての血圧日内変動の有用性をさらに明らかにするためには、正常血圧の人々と高血圧患者の両方を対象に、脳卒中のサブタイプごとのリスクを調べる大規模研究が必要だ、と著者たちは述べている。

 本論文の原題は「Prognostic Significance for Stroke of a Morning Pressor Surge and a Nocturnal Blood Pressure Decline. The Ohasama Study」。アブストラクトはHypertension誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2005.6.14 検診時血圧が高い患者は全員、自由行動下血圧を測るべき 心血管死亡の予測因子として自由行動下血圧の有益性示す、アイルランドの研究
◆2004.10.12 日本高血圧学会速報】一般住民でも仮面高血圧が心血管系リスク:大迫研究


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