2006.01.11

抗がん剤腹腔内投与の追加で進行卵巣がんの全生存期間が16カ月延長

 米Johns Hopkins大学KimmelがんセンターのDeborah K. Armstrong氏らは、ステージ3の卵巣がん患者を対象に、米国の標準治療であるパクリタキセル+シスプラチン静注と、パクリタキセル静注にシスプラチンおよびパクリタキセルの腹腔内投与を併用した場合の効果を比較する無作為割付3相試験を実施した。その結果、無進行生存期間と全生存期間の有意な延長が得られた。研究成果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌2006年1月4日号に報告された。米国立がん研究所(NCI)は掲載当日、同療法を推奨する声明を発表した。

 対象となったのは、ステージ3の卵巣がんで、手術で取りきれなかった腫瘍が1.0cm以下の患者。429人の患者を登録、415人を静注(IV)だけの群と腹腔内投与併用(IP)群に割り付けた(IV群210人、IP群205人)。

 IV群には、1日目に体表面積1m2あたり135mgのパクリタキセルを静注、2日目には同75mgのシスプラチンを静注した。IP群には、1日目の135mgのパクリタキセル静注に続き、2日目は1m2あたり100mgのシスプラチンを腹腔内投与、さらに8日目に同60mgのパクリタキセルを腹腔内投与した。これらの治療は3週ごとに6サイクル行われた。

 副作用は、IP群に有意に多かった。グレード3と4の副作用のなかで、p≦0.001になったのは、白血球減少症、消化管イベント、神経系イベント、感染、代謝系イベント、痛み、疲労感だった。IP群で6サイクルの治療を完了できたのは86人(42%)に留まった。一方、IV群では174人(83%)が治療を完了できた。

 以下の分析は、治療を完了した患者ではなく、割り付けられた全員を対象に行われた。追跡期間の中央値は、IV 群48.2カ月、IP群52.6カ月。無進行生存期間の中央値は、静注群18.3カ月、腹腔内投与群23.8カ月(ログランク検定のp=0.05)。全生存期間の中央値は49.7カ月と65.6カ月(同p=0.03)と、約16カ月の差になった。IV群と比べたIP群の調整済み相対リスクは、再発0.80(0.64-1.00)、死亡0.75(0.58-0.97)となった。

 QOLは、卵巣がん患者用のQOL尺度(FACT-O)を用いて定期的に評価した。IP群のスコアは、4サイクル目までの期間(p<0.001)と治療後3〜6週間(p=0.009)は有意に悪かったが、治療終了後1年を経過した時点では、有意差はなかった(p=0.56)。

 以上の結果は、適切に切除された進行卵巣がん患者の場合、標準治療に比べて、パクリタキセル静注にシスプラチン+パクリタキセルの腹腔内投与を併用した方が、生存期間が長いことを示している。著者たちは、副作用の増加とQOL低下は起こりうるが、進行した卵巣がん患者への抗がん剤腹腔内投与は推奨すべきだ、と述べている

 なお、IP群では、6サイクルの治療を完了していない患者が多かったにもかかわらず、生存期間延長は明らかだった。これについて著者たちは、治療開始から間もない時期に効果が得られている可能性、または、6サイクルを完了できた患者の生存期間はさらに長い可能性がある、と述べている。米国立がん研究所(NCI)は2006年1月4日、外科医とその他の医療従事者に向けて、この治療を推奨する声明を発表した。

 本論文の原題は「Intraperitoneal Cisplatin and Paclitaxel in Ovarian Cancer」。アブストラクトはNEJM誌Webサイトのこちらで閲覧できる。 

 抗がん剤の腹腔内投与は新しいアプローチではない。しかし、卵巣がんに対する治療としては、広く用いられてはいなかった。静注に比べて腹腔内投与は、より高用量を頻繁に投与できるうえに、腹腔内のがん細胞をより効率よく殺せるという利点を持つ。卵巣がんの場合には、がん細胞が腹腔内に散らばり、腹腔内で再発が起こるリスクが高いため、腹腔内投与の有用性は高いと考えられる。

 米国立がん研究所のプレスリリースはこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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