2005.12.09

【裁かれたカルテ】定期的な検査を怠り肝がんの発見に遅れ 医師に注意義務違反、2000万円余の支払い命じる

 肝硬変患者だった67歳の男性が死亡した。遺族らは、被告医師が定期的な検査を怠り肝がんの発見が遅れたからだとし6000万円余の損害賠償をもとめて提訴した。判決は、医師の注意義務違反を認定、違反による肝がんの発見の遅れと男性の死亡との間に因果関係が認められるとし、2000万円余の支払いを命じた。

 裁判で認定された診療経過の概要は、以下の通り。

 亡くなったAさんは、1990年8月に被告病院の内科を受診。その時、B型肝炎ウイルスによる代償性の肝硬変と診断された。以後、毎月1回程度、被告病院の内科を受診していた。

 1999 年には、Aさんは、3月29日に肝機能検査を、5月25日に胃カメラによる検査を受けていた。また、7月30日には肝機能検査、NH3検査及びAFP検査(AFP値92.8ng/ml)を受け、11月4日にも同様の検査(AFP値768.3ng/ml)を受けたが、この間の8月30日と10月4日の受診の際にはAFP検査は行われなかった。

 その後Aさんは、12月13日の受診の際に、1週間前から左半身が麻痺したような感じで頭痛があると訴えた。被告H医師から言われて被告病院の耳鼻科を受診。12月22日にMRI検査を受けた結果、転移性骨腫瘍の疑いがあるとされ、同日にI病院を受診し、同月25日には、同病院にて超音波検査(エコー)を受けた。

 同病院の医師が被告H医師にあてた12月25日付け診療情報提供書には、「肝右葉S7、S8全体が、びまん性の肝細胞がん(9.7×7.4cm)に冒され、S5にも広がっているなどとする記載があった。

 Aさんは、1999年12月28日に、被告病院の内科を受診し、同月初旬から微熱、腹満感の増強がある、頭痛で眠れないこともあるなどと訴え、同日から被告病院の内科に緊急入院した。同日、穿刺液検査、血液検査等が行われ、この時のAFP値は3318.5ng/mlだった。

 2000 年1月14日、被告H医師は、原告らに対し、Aさんの病状について以下のような説明をしている。「肝細胞がんの末期で肝臓の右葉すべてががん化している。右頬の痛みもがんの骨転移である。脳転移の可能性もある。もう手の施しようがないので、検査もやらず、痛みの緩和を図るしかない」。

 結局Aさんは、2000年1月19日に67歳で死亡した。

■ AFP及びPIVKA-IIの腫瘍マーカー検査の頻度は

 裁判では、被告医師がAさんに必要な検査を怠り、かつ、肝がん発生の兆候を見落としたのかどうかが争われた(詳しくは有料ネット講座「まさかの時の医事紛争予防学」で提供しています)。

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