2005.11.07

脂肪のおいしさ感じる仕組みに味蕾のCD36が関与、欠損マウスなどで確認

 脂肪の摂取量が多いと太る。肥満に関連する病気のリスクも高まる。肥満者は、やせている人より脂肪を好むという報告もある。フランスの欧州味覚科学センターのFabienne Laugerette氏らは、脂肪への嗜好が、脂肪酸輸送にかかわるたんぱく質であるCD36によってもたらされることを動物実験で示した。詳細は、Journal of Clinical Investigation誌2005年11月号に報告された。

 ラットやマウスも脂肪を好む。脂肪への指向性は、口腔感覚系が食物脂肪を検出できることを示唆する。が、この仮説の正当性を支持する実験結果が得られるようになったのは最近のことだ。脂肪感知に役割を果たすのは、食物脂肪の大部分を占める中性脂肪ではなく、長鎖脂肪酸(LCFA)だという。CD36は、LCFAと高親和性に結合する。CD36の細胞質側にはSrcキナーゼが結合しており、この分子は信号伝達に関わると見られている。また、ラットの舌の感覚上皮におけるCD36の発現も報告されていた。

 そこで著者たちは、CD36がLCFAの感知に役割を果たすと考え、ラットと野生型マウス、そしてCD36欠損マウスを用いて実験を行った。

 ラットに免疫染色法を適用、CD36の分布を調べたところ、CD36は味蕾細胞の頂点部分に局在していた。CD36は、舌乳頭、特に有郭乳頭で高レベルに発現しており、口蓋乳頭には見られなかった。他のたんぱく質で、感覚上皮特異的な発現を示すものはなかった。

 次に、脂肪嗜好性とCD36の関係を調べた。野生型マウスとCD36欠損マウスに、LCFAとして2%リノール酸を含む液体とこれを含まない対照液を与え、48時間の飲量を測定。野生型マウスではリノール酸を含む液体を対照液の4倍以上摂取していたが、欠損マウスには、脂肪含有液に対する有意な嗜好性は見られなかった。比較のため、ショ糖やキニンを含む液体と含まない液体でも同様に飲量を調べたが、野生型と欠損型マウスの間に差はなかった。

 摂取後に消化器系、神経系を経た刺激が脂肪に対する嗜好性に影響する可能性もあるため、0.5時間という短時間での飲量を比較する実験も行ったが、結果は同様だった。また固形飼料の1時間の摂取量も調べたが、野生型マウスは5%リノール酸を含むエサを好んで食べ、欠損マウスはそちらに対する嗜好を示さなかった。

 さらに、食道を結紮したラットと野生型マウスの舌の上に、数種類の長鎖不飽和脂肪酸を滴下し、胆汁の流量と膵液中のたんぱく質含有量の変化を追った。迅速かつ持続的な上昇が見られたのは、オレイン酸(胆汁流量のみ有意)、リノール酸(いずれも有意に上昇)、リノレイン酸(いずれも有意に上昇)を用いた場合で、中鎖脂肪酸や長鎖飽和脂肪酸では、有意な上昇は起こらなかった。CD36欠損マウスの場合には、リノール酸を舌に滴下しても、胆汁の流量や膵液中のたんぱく質含有量に変化はなかった。さらに、野生型マウスの口腔内の、CD36が存在しない部分にリノール酸を滴下しても、変化は認められなかった。

 これらの発見は、CD36が口腔内でのLCFAの検出に関与することを示した。舌での脂肪感知システムが変化すれば、摂食行動が異常になる可能性もある。著者たちは、次の段階として、LCFAがCD36に結合すると実際に信号伝達が行われるかどうかを明らかにし、さらに、CD36の信号伝達に始まって、摂食行動や消化に影響を与える神経経路の探索を進める必要があると述べている。

 本論文の原題は「CD36 involvement in orosensory detection of dietary lipids, spontaneous fat preference, and digestive secretions」。現在、全文がJCI誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2005.2.7 国際脳卒中会議2005速報】1日65g以上の総脂肪摂取は、虚血性脳卒中リスクを増大させる−−NOMASより
◆2004.11.10 AHA2004速報】αリノレイン酸が豊富な食品は女性の心臓病予防に効果的、たくさん摂る人は心突然死が半減


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