2005.11.02

小さく生まれ小児期に急に成長すると成人後の心臓疾患リスクが上昇する

 低出生体重は冠動脈疾患の危険因子、という報告は複数ある。幼児期の急速な体重増加がその後の肥満を引き起こす可能性も指摘されている。が、出生後の成長パターンが疾病リスクにどのように影響するかは明らかではなかった。英Southampton大学のDavid J.P. Barker氏らは、ヘルシンキで1934〜1944年に生まれた男女の中から冠疾患を発症した人々の成長パターンを調べた。得られた結果は、出生時と2歳時に小柄で、11歳までに急速に体重とBMIが増加すると、冠疾患リスクが上昇することを示した。詳細は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌2005年10月27日号に報告された。

 対象は、小児期の成長記録が得られた男性4630人と女性4130人。うち男性357人と女性87人が冠動脈疾患で入院または死亡していた。

 成人後、冠疾患を発症した人の小児期の体格の平均を標準化スコア(zスコア)処理した。なお、同国の平均出生体重は3.4kgである。

 発症男性357人の出生体重は、男性全体の平均を約0.2 ×標準偏差(SD)下回っていた。出生時の低BMIは、その後の冠動脈イベントの予測因子として有意(p<0.001)だった。1歳までの間に、身長、体重、BMIのzスコアの平均はさらに低下。1歳時と2歳時の低BMIと低身長は、その後の冠動脈イベントを有意に予測できた。

 2歳をすぎると、BMIのzスコアは徐々に増加したが、身長のzスコアはほとんど変化しなかった。11歳時のBMIは、冠動脈イベントの予測因子として有意ではなかった。が、重回帰分析を行うと、冠動脈イベントと、2歳時の低BMI(p<0.001)および11歳時の高BMI(p=0.05)の間に有意な関係が見いだされた。BMI 1SD増加あたりの冠疾患発症のハザード比は、2歳時は0.76(p<0.001)、11歳時は1.14(p=0.05)だった。

 女児にも男児と同様の傾向が見られたが、冠動脈イベントとの間に有意な関係が示されたのは、重回帰分析における2歳時(p=0.001)と11歳時(p=0.04)のBMIのみ。BMI 1SD増加あたりの冠疾患発症のハザード比は、2歳時0.62(p=0.001)、11歳時1.35(p=0.04)だった。

 次に、男女あわせて出生体重および2歳時のBMIと冠動脈イベントとの関係を分析した。出生体重で3分(3.0kg未満、3.0-3.5kg、3.5kg超)、2歳時のBMIでも3分(16未満、16-17、17超)した計9群のうち、出生体重、BMIの両方が最も大きいグループと比較した年齢調整後ハザード比が高かったのは、出生体重3.0kg未満でBMIが17以下の2群(いずれもハザード比1.9)。

 同様に2歳時のBMIと11歳時のBMI(16未満、16-17.5、17.5超)で9群に分けた。両方が最も小さいグループと比較した年齢調整後ハザード比が最も高かったのは、2歳時のBMIが最も低く、11歳時のBMIが最も高かったグループ(ハザード比3.0)だった。

 こうした成長パターンが冠危険因子に影響を与えるかどうかを調べるため、2003年に、当初登録された人の中から2691人(平均62歳)を選んで、空腹時血糖値、血漿インスリンおよびプロインスリン濃度、総コレステロール値とトリグリセリド値、収縮期圧を測定した。

 その結果、総コレステロール値以外は、出生体重が少なかった人と、2歳時に低BMIだった人で、有意に高かった。2〜11歳のBMIのzスコアの変化との間に強力な関係が見られたのは、血漿インスリンとプロインスリン濃度だった。空腹時のインスリンとプロインシュリン濃度は、インスリン抵抗性の指標となる。著者たちは、冠疾患発症者の成長パターンが、冠危険因子の一つであるインスリン抵抗性をもたらしたのではないかと考えている。

 出生から小児期の成長パターンが、複数の冠危険因子に影響を与える可能性が示唆された。ある時期にぐんぐん大きくなることが必ずしも将来の健康を約束するわけではないなら、親はバランスのとれた成長を促すよう心がける必要がある。

 本論文の原題は「Trajectories of Growth among Children Who Have Coronary Events as Adults」。アブストラクトはNEJM誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


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