2005.10.28

肝臓がん 標準治療のエッセンス 病状に応じた治療法の選択が大切 

診 断

 肝臓がんの診断法には、大きく分けると「画像診断」と「血液検査」があります。

 画像診断は、肝臓がんの診断に欠かせない検査です。近年、診断装置の性能が急速に進歩しており、多くの肝臓がんは、画像診断のみで確定診断できるとされています。

 画像診断法には、超音波検査、コンピューター断層撮影(CT)検査、磁気共鳴画像(MRI)検査、血管の形や血液の流れをみる血管造影検査、放射線を出す薬の広がり具合を撮影する核医学検査など、多くの方法があります。それぞれの検査法に特徴がありますが、診療ガイドラインでは、検出感度等を比較した結果、腕の静脈などから造影剤(X線を吸収する作用を持つ薬剤)を注入して行うCT検査とMRI検査が勧められるとしています。

 一方、造影剤を動脈内に注入して行う血管造影検査は患者にかかる負担が大きいため、CT検査と併用する場合以外には勧められないとしています。また、最近、高性能の検査として話題になっているPETなどの核医学検査についても、現時点での性能は、従来のCT検査やMRI検査より優れているとはいえないとしています。このように、診療ガイドラインに記載された推奨度は、既に確立された方法とそうでない方法を区別するのに役立ちます。

 血液検査では「腫瘍マーカー」と呼ばれる特殊な物質の数値を調べます。腫瘍マーカーは、がんと関連のある物質で、この値が高い場合にはがんが存在する可能性があります。ただし、がん以外の原因で高い値になることやがんがあっても低い値のことがありますので確実な診断にはなりません。画像診断でがんを探すきっかけとするのに適した検査といえます。

 画像診断で確定診断ができなかった場合、体の外からがんだと疑われる部分に針を刺し、組織を取って顕微鏡でがん細胞があるかどうか調べる「針生検」が行われる場合もあります。この方法は、針を刺した場所から出血したり、針に付いたがん細胞が別の組織に広がるといった問題が起こる可能性があります。このため、診療ガイドラインでは、針生検を行うべきかどうか、慎重に適応を見極めるべきだとしています。

治 療

 肝臓がんの主な治療法には、肝臓の一部を切り取る手術、皮膚の上からがんを狙い撃ちする経皮的局所療法、血管造影の方法を使って肝動脈に栓をする肝動脈塞栓療法(TAE)の3つが挙げられます。このほか、抗がん剤を用いた化学療法も行われます。また、ほかの人の肝臓をもらう肝臓移植も一部で実施されています。一方、積極的な治療の効果があまり見込めないときは、症状に応じた対症療法を主とする緩和療法もあります。診療ガイドラインでは、複数の論文を基に、肝臓がんの進行具合ごとの治療法の選択基準を示しています(図)。

 手術では、肝臓がんの進み具合に加え、肝臓の機能も考慮して、切り取る範囲が決められます。診療ガイドラインでは、手術と同時期にTAEや抗がん剤などを加える併用療法については、今のところ推奨できるほどの予後改善効果が認められないとしています。

 皮膚の上から針を刺して、がんのある場所に直接治療を施す経皮的局所療法としては、次の3つが代表的な方法です。1つは「経皮的エタノール注入療法(PEI)」です。これは、正確ながんの位置を確認し、純アルコールをがんの部分に直接注入して、がんを死滅させる方法です。ただし、エタノールは液体なので、がん全体にまんべんなく行き渡らない場合もあり、治療が不完全になりやすいという問題があります。

 2つ目は「経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)」、3つ目は「経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)」です。いずれも、エタノール注入療法と同じように、がんの正確な位置を確かめたうえで、特殊な針をがんの部分に差し込んで、針の先端から強い電波を発生させ、がんを熱で固めて死滅させるという方法です。ラジオ波やマイクロ波は電波の種類を表しますが、ラジオ波の方が一度に広範囲のがんを死滅させることができるため、急速に普及しています。

 ラジオ波焼灼療法は、2004年に健康保険の枠内に入り、広く使われ始めたばかりで、長期間の有効性についての評価はこれからです。診療ガイドラインでは、現時点での評価として、エタノール注入療法はほかの経皮的局所療法に比べ、局所再発率が高いこと、一方、腹部の出血などといった重い合併症がみられる頻度は、マイクロ波凝固療法やラジオ波焼灼療法の方が高いことを挙げています。

 肝動脈塞栓療法(TAE)は、がん細胞に酸素や栄養を供給している肝動脈を塞いで、がん細胞をいわば“兵糧攻め”にする方法です。正常な肝臓の細胞は肝動脈と門脈という2種類の血管から血液を供給されているため、肝動脈を塞いでも影響は小さく、動脈への依存度が高いがん細胞だけを選択的に死滅させることができるのが特徴です。診療ガイドラインでは、手術や経皮的局所療法が適さない進行がんの患者に勧められるとしています。

予 後

 手術が行えた場合、5年以上生きられる人の割合は半数以上と言われています。しかし、その他の治療法については条件の違いなどのためにさまざまな報告があります。病状によって適切な治療法は異なりますので、治療を選択する場合には専門医に相談することをお勧めします。

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