2005.10.22

【日本心不全学会速報】 抗うつ薬による薬剤性心不全例、薬の中止と心不全管理で症状改善

 抗うつ薬によって薬剤性心不全をきたしたと考えられる症例が報告された。薬の中止と心不全管理で症状は改善していることから、原因不明の心不全例で抗うつ薬を内服している場合には、留意する必要がありそうだ。虎の門病院の清水祐一郎氏らが10月21日、Case Reportsで発表した。

 症例は、71歳の女性。既往歴は、56歳に腎移植ドナー、61〜70歳に更年期障害、68歳以降は神経症があった。主訴は、下腿浮腫、呼吸困難だった。

 現病歴は次の通り。61歳から全身倦怠感に対して漢方薬やビタミン剤の内服を開始していた。症状が軽快したので日常は活動的に過ごしていたが、68歳からは眩暈や倦怠感などの愁訴が現れ始めた。そのため近くの医院で心気症と診断され抗うつ薬の内服を始めた。

 70歳から全身倦怠感が増強し、2005年初頭から安静、労作を問わず前胸部圧迫感、呼吸困難感、起座呼吸が出現した。同年4月、自ら下腿浮腫に気づき近医を受診した。

 その際、両側下腿浮腫、起座呼吸で胸部レントゲン写真では心胸郭比の拡大と肺うっ血が認められた。心不全が疑われたため虎の門病院に紹介された。

 内服歴は、1994年ごろから2003年まで半夏厚朴湯。2001〜2004年に、パキシル(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、レキソタン(ベンゾジアゼピン類)、ドグマチール(抗ドパミン薬)、トレンドミン(セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ベンザリン(ベンゾジアゼピン類)、メイラックス(ベンゾジアゼピン類)。2005年から入院時までは、レキソタン(ベンゾジアゼピン類)、ドグマチール(抗ドパミン薬)。

 来院時現症としては、起座呼吸、胸部X線写真による肺うっ血を認めた。特に誘因がないうっ血性心不全の状態での来院であり、入院後はカルペリチド点滴静注を開始、第1日病日からロサルタン50mg、第15病日からはカルベジロール25mgが開始された。

 同時に心不全の原因の探索も実施し、薬物負荷T1心筋シンチグラフィー、肺血流シンチグラフィーを行ったが、LVEF27%の低下以外は異常所見を認めなかったという。第10病日に両心カテーテル検査および心筋生検を実施。心筋病理所見で心筋細胞の空胞状変性と軽度の細胞周囲線維化を認めた。ただし、炎症細胞の浸潤は軽度であり心筋細胞の肥大や錯綜配列は認められなかった。

 心不全の原因として明らかなものはなかったが、病理所見は薬剤性心筋障害であるとしても矛盾しないものだったため、抗うつ薬による薬剤性心不全と考え、第14病日から内服薬をすべて中止した。その結果、その後の臨床経過はNYHAIII度からI度へと劇的に改善した。この結果から演者らは、抗うつ薬による薬剤性心筋障害の可能性が考えられる場合は、「薬剤を中止して心不全の治療を行うべきである」と結論付けた。(三和護、医療局編集委員)

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