2005.10.16

重症心不全の肺動脈カテ留置による監視、使わない場合と死亡率は同等

 重症の心不全患者の血行動態を監視するための肺動脈カテーテル(PAC)留置には議論が多い。入院患者の死亡率を高める可能性も示されている。米Brigham and Women’s HospitalのLynne W. Stevenson氏らは、深刻な状態にある心不全患者を対象にPACの安全性と臨床アウトカムへの影響を評価した。その結果、PAC使用群と非使用群は、退院後の生存日数、死亡率、入院日数に有意差はなく、期待効用の点ではPAC群が勝ることが明らかになった。詳細はJournal of American Medical Association(JAMA)誌2005年10月5日号に報告された。

 入院している重症心不全患者を対象とするESCAPE(Evaluation Study of Congestive Heart Failure and Pulmonary Artery Catheterization Effectiveness)は、米国立心肺血液研究所(NHLBI)の後援を受けて行われた無作為割付比較対照試験で、2000年1月から2003年11月まで、米加の26医療機関で行われた。

 PACの使用が妥当と考えられる、深刻だが安定している433人の患者を2分し、臨床評価のみ(218人)、または、臨床評価とPAC(215人)監視下での治療に割り付けた。治療は特に指定しなかったが、鬱血の解消を目的として利尿剤の静注その他が行われた。PAC群については、肺毛細管楔入圧が15mmHg、右房圧が8mmHgを目標として治療が行われた。PAC留置の中間値は1.9日で、その間に血行動態は有意に改善された。

 両群で、治療により、頸動脈圧、浮腫、その他の症状が軽減された。PAC使用は、主要エンドポイントである6カ月間の病院外での生存日数に有意に影響しなかった(PAC群133日と非使用群135日、ハザード比1.00、p=0.99)。死亡率(43%と38%、オッズ比1.26、p=0.35)、入院日数(8.7日と8.3日、ハザード比1.04、p=0.67)にも有意差はなかった。

 入院中に感染などの有害事象を1つ以上経験した人はPAC群で有意に多かった(47人(21.9%)と25人(11.5%)、p=0.04)。PAC使用に関連する死亡は無く、PACに特異的な副作用は9件あった。運動能力(6分間の歩行距離)とQOLは両群で向上したが、PAC群でその程度はより大きい傾向が見られた。そこで、期待効用を時間得失法(time trade-off)で評価したところ、非使用群に比べ、PAC群の機能的改善がどの時点の評価でも有意に大きいことが明らかになった(p=0.001-0.02)。

 入院中の心不全患者の体液量の過剰を減じるための治療は、PAC使用の有無にかかわりなく、充満圧上昇による症状を大きく軽減した。注意深い臨床評価により、PACなしでも適切な監視が可能で、主要なアウトカムに差はないことが明らかになった。PAC使用は副作用を増すが、全死亡率や入院日数には影響しなかった。そこで著者たちは、当初の治療で鬱血の症状が解消されない患者については、経験豊富な施設でのPACによる監視が治療の選択を容易にするのではないかと考えている。

 今回対象となったのは非常に深刻な患者たちだった。通常、治療は死亡率減少を目的とするが、こうした患者の中には余命延長よりQOL向上を望む患者も存在することから、テイラーメイドの治療を考える必要があるだろうと著者たちは述べている。

 本論文の原題は「Evaluation Study of Congestive Heart Failure and Pulmonary Artery Catheterization Effectiveness: The ESCAPE Trial」。アブストラクトはJAMA誌Webサイトのこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆2003.11.27 ARDS・ショック患者への肺動脈カテーテル、無挿入例と予後に差なし
◆2003.1.7 ハイリスク手術患者への肺動脈カテーテルは不要、大規模無作為化試験で判明


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