2005.10.12

【再掲】ヘビースモーカーに朗報? 鎮痛薬の長期服用で口腔がんリスクが半減 ただし、心血管死リスクは倍増します――Lancet誌に報告

 本記事で紹介したLancet誌掲載の論文は、研究のもとになったデータがすべて筆頭筆者の捏造したものであることが明らかになりました。Lancet誌編集部が、筆者の所属するラジウム病院からの通報をもとに2006年1月に発表したものです。MedWaveでは事態をご報告する意味で、当分の間、掲載を続けることに致します。ご了承の上でお読みください。(MedWave編集部)


 喫煙者に多く見られる口腔の扁平上皮がんは、予後が悪く死亡率も高い。予防には禁煙が有効だが、実施が困難な人も少なくない。そこで、非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)を予防的に用いる方法に期待が集まっている。ノルウェー・ラジウム病院のJon Sudbo氏らは、ヘビースモーカーを対象に、NSAIDsの長期使用がどのような効果を持つのかを調べた。その結果、口腔がんリスクは半減するものの全死亡率に変化はなく、その原因は心血管死リスクの増大にあることが明らかになった。詳細は、Lancet誌電子版に2005年10月7日に報告された。

 シクロオキシゲナーゼ(COX)が口腔がんに関係することを示すエビデンスが複数得られている。COXの活性を阻害するNSAIDsには、一部のがんに対する予防効果が示唆されている。半面、この種の薬剤は心臓血管系リスク上昇をもたらす可能性がある。そこで研究者らは、NSAIDsの使用が口腔がんの発症率、全死亡率、心血管死亡率にどう影響するかを調べるネステッド・ケースコントロール研究を実施した。

 ノルウェー全土の集団の健康に関するデータを前向きに収集し、登録したデータベースからデータを抽出。対象は、口腔がんリスクが上昇しているヘビースモーカー9241人(15箱・年以上の喫煙者。箱・年は1日喫煙箱数×喫煙年数)。その中から口腔がんを発症した454人(平均年齢63.3歳)と、喫煙量は同等でがん患者ではないマッチド・コントロール454人を選出、計908人について分析した。263人(29%)は6カ月以上NSAIDs、83人(9%)はアセトアミノフェンを使用、565人(62%)はどちらも使用していなかった。

 NSAIDsとしては、アスピリンが14人(全員が100mg/日で冠動脈疾患予防が目的)、イブプロフェン52人、ナプロキセン55人、インドメタシン62人、ピロキシカム52人、ケトプロフェン28人(アスピリン以外は鎮痛薬として使用)。12%が5年未満、18%が5〜10年、33%が10〜15年、37%が15〜26年使用していた。

 NSAIDsの使用は、口腔がんリスクの減少をもたらした。全体では、ハザード比0.47(95%信頼区間0.37-0.60)だった。使用期間別では、5年未満の使用でハザード比0.53(95%信頼区間0.28-0.98)、5〜10年で0.68(0.44-1.04)、10〜15年で0.61(0.41-0.91)、15〜26年で0.30(0.19-0.47)となった。なお、ケトプロフェンについては有意なリスク減少は見られなかった。また、COX阻害効果がないアセトアミノフェン群にはリスク減少は見られなかった。したがって口腔がんリスク減少は、COX阻害を通じて起こると考えられた。

 禁煙もまた口腔がんリスクを減少させた(ハザード比0.41、95%信頼区間0.32-0.52)。NSAIDs未使用者ついても、禁煙は口腔がんリスクを有意に減少させた(0.43、0.32-0.58)。

 しかし、全死亡率に変化はなかった。そこで副作用について調べたところ、長期的なNSAIDsの使用による心血管疾患関連死のリスク上昇が明らかになった(2.06、1.34-3.28)。心血管イベントによる死亡はNSAIDs使用者の16%、非使用者の7%、アセトアミノフェン使用者の5%だった。アスピリンには心血管関連死のリスク上昇は見られなかった。NSAIDsの中で特にリスク上昇が顕著だったのはインドメタシン(ハザード比2.86、95%信頼区間1.50-5.45)とイブプロフェン(2.26、1.13-4.52)。なお、NSAIDsの使用は、他の原因による死亡率には影響しなかった。

 NSAIDsの長期使用は、口腔がん発症率を減少させる。その効果は、禁煙と同等だった。したがって、禁煙が最良の選択であることは間違いない。それでもNSAIDsを用いる場合には、注意深いリスク-利益分析が必要であることを、今回の結果は示している。

 本論文の原題は「Non-steroidal anti-inflammatory drugs and the risk of oral cancer: a nested case-control study」。アブストラクトはLamcet誌Webサイトのこちらで閲覧できる(Lancet誌のサイトへの登録が必要です)。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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