2005.10.05

がんのリハビリテーション 回復を早めQOLを高める

 これまで、がんの進行や治療によって受けた身体的・心理的なダメージに対し、積極的な対応が行われることは、ほとんどありませんでした。医療従事者にしても、患者さん自身にしても、「がんになったのだから仕方がない」というあきらめの気持ちが強かったからです。しかし、適切なリハビリを行うことで、患者さんの回復力やQOL(生活の質)を高め、できるだけ早く家庭や社会に復帰することが可能です。

 がんのリハビリには、まず手術による合併症を予防する目的で行われるものがあります。肺がん、食道がん、胃がん、大腸がんなどの開胸・開腹手術後は、痛みや麻酔の影響で呼吸が浅くなり、痰がうまく出せず、肺の奥(背中側)にたまりやすくなります。そのため、痰づまりや肺炎の合併症を起こしやすくなるのです。

 そこで、これらの合併症を防ぐために術前から腹式呼吸や痰の出し方などの呼吸リハビリの訓練を開始し、術後に実践すると共に、早期離床に向けたリハビリが行われます。

 静岡県立静岡がんセンターの成績によると、食道がん手術で術前術後のリハビリを受けた患者66人のうち、術後肺炎を併発したのは2人(3%)だけでした。全国統計(6.4〜33%)と比較しても、リハビリを受けたほうが合併症の発生率がかなり低くなることが分かります。

 また、化学療法や放射線治療の副作用のために体力が低下した患者さんには、運動療法が効果的です。寝たきりのままでは治療を続けるのが困難になる場合があり、体力回復を図るのもリハビリの重要な役目の一つです。

 さらに機能回復を目的とするリハビリもあります。たとえば、乳がんや子宮がん、卵巣がんの手術では、リンパ節を取り除いた後にむくみ(リンパ浮腫)が起こることがあります。その発症率は乳がんで1割、子宮がんで2〜3割といわれ、年間1万人の女性が後遺症に悩まされています。リンパ浮腫には、リンパドレナージやスキンケア、運動療法などによる包括的なリハビリが有効です。ここ数年、「リンパ浮腫外来」を設置し、このようなリハビリに取り組む施設も徐々に増えてきました。

乳がんリハビリの流れ

 このほかターミナル期の疼痛緩和や症状の改善にも効果が見られるため、ホスピスを中心にがんのリハビリが提供されています。

 現在、がん専門病院で常勤のリハビリ専門医が在籍するのは、静岡県立静岡がんセンターのみです。しかし、最近では医療従事者の間でもがんのリハビリの必要性が認識されるようになり、地域のがんセンターにおいてもリハビリ科の新設やスタッフ増員を検討する動きが出ています。

 生存率が向上し、がん患者のQOLが求められるようになる中、リハビリの重要性は、さらに高まっていくでしょう。より高い効果を得るためには、患者さん自身がリハビリの必要性をよく理解し、がんと診断された直後から主治医と相談しながら、リハビリ・スタッフのサポートを積極的に受けていくことが大切です。

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