2005.10.05

切って治す手術治療 守備範囲と限界を知ろう

 がんが怖いのは、悪性腫瘍が発生した臓器にとどまらず、周りの臓器に広がったり、離れた臓器や骨などへ飛んでしまったりして増殖し、正常な細胞をどんどん死滅させてしまうことです。手術治療では、ある臓器にとどまっているがんと周囲のリンパ節を取り除き、ほかの臓器や骨などに広がるのを抑えます。

 この治療法のメリットは、早い時期であればがんを完全に治せることです。ただし、デメリットもあって、正常な部分も含めて切除することになるので、ある程度、臓器や身体の機能が落ちることは避けられません。なかには日常生活に支障をきたしたり、見かけが悪くなったり(乳腺などを切除した場合)することもあります。最近では早期がんを中心に、機能を温存したり切除範囲を最小限にとどめる縮小手術も盛んに行われています。

 一方で、昔は、がんと言えば治療は「まず体を開いて切る手術」でしたが、診断と治療技術の進歩によって、開腹手術ではない体への負担が少ない治療で治るケースも増えてきています。胃、食道、大腸がんの内視鏡治療、肺がんのレーザー治療、肝がんのラジオ波焼灼療法がその代表例です。

 さらに手術治療自体も、がんとその周囲のリンパ節を切除する「定型的手術」で確実に治る「適応範囲」と、手術では治らないものがあるという限界が分かってきています。どんなに診断が進歩しても、ほかの臓器へ転移していたり、全身にがんが広がった状態で見つかることはあるわけで、そうしたがんには、残念ながら手術治療は無力です。

手術治療の守備範囲

 ほかの治療を受けるときでも同じですが、手術を受ける際には、自分の病状と治療法についてよく説明を受けましょう。分からないことは遠慮なく聞いて、自分の問題として考えることが大切です。特に、手術を受けても効果が限られる人や、糖尿病、肺気腫、心臓病などほかに重大な病気があって手術に危険が伴う人は、医師とよく相談し、手術を受けるかどうか自分で決めるようにしましょう。

 なかには、本人がA医師の手術を受けようと決めているのに、家族が無理矢理セカンドオピニオンを受けさせ、A医師との関係を悪化させてしまうこともあります。自分の人生ですから、家族や他人の意見や噂、ランキング本などに流されず自分で決めることが大切です。家族の方も、本人の意見を尊重するようにしてください。

 最近では少ないはずですが、手術中に病理診断ができないような病院でがんの手術を受けるのは避けましょう。「病理の先生が手術の日にいますか」と聞いて、いるようなら大丈夫です。

 執刀医の年間手術件数や手術死亡率は一応確認した方がよいとは思いますが、いくつなら良いという基準はありません。それより、外科医は判断力があるかどうかということが最も大事です。ですから、診察のとき、どんな疑問にも真剣かつ的確に答えてくれ、信頼もできると思ったら、その医師の手術を受けるのが一番ではないでしょうか。

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