2005.09.22

Interview  CIBIS IIIの報告を受けて

 欧州心臓病学会(ESC)において、CIBIS IIIは最も大きな会場で報告され、非常に多くの聴衆を集めた。会場で報告を聞かれた慶応義塾大学の吉川勉氏から、現地で感想を伺った。

◆予想通りの結果
 ビソプロロール先行群、ACE阻害薬先行群で予後(死亡+入院)に差はなく、また生存率に関しては、ビソプロロール先行群で改善傾向が認められた。
 これらの結果は予想通りであり、β遮断薬にはACE阻害薬などレニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬を上回る生存率改善作用があることが示されたといえよう。
 過去のCIBIS II、MERIT-HF、COPERNICUSなどの大規模臨床試験において、β遮断薬の生存率改善作用が認められた。これらはACE阻害薬にβ遮断薬を追加した成績だが、ACE阻害薬にアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を追加したVal-HeFT NEJM 2001; 345: 1667] やCAHRM added Lancet2003;362:767] 、通常用量ACE阻害薬と高用量ACE阻害薬を比較したATLAS Circulation 1999; 100: 2312] では、いずれも生存率そのものの有意な改善は認められなかった。つまりACE阻害薬を増量もしくはRA系抑制薬を併用しても生存率そのものは改善されず、β遮断薬はこの点でRA系抑制薬と大きく異なる。

◆臨床の現実を反映した試験
 CIBIS IIIでもう1つ重要なのは、平均年齢が72歳という高齢者を対象としている点である。従来のβ遮断薬による慢性心不全の臨床試験は対象患者の年齢が平均60歳であり、これらの成績が実際の慢性心不全患者が多い70歳を超える高齢者にあてはまるかどうか、必ずしも明らかではなかった。しかしCIBIS IIIによって、ビソプロロールは高齢者に対しても有用であることが明らかになった。さらに、層別解析では72歳以上で有用性がより大きい傾向がみられ、年齢だけを理由にβ遮断薬使用を控える合理性はなくなったと言える。

◆CIBIS IIIが実地臨床にもたらすもの
 CIBIS IIIの結果を受け、ビソプロロール先行群で最終的に悪化した評価項目がない以上、個人的にはβ遮断薬が禁忌あるいは忍容性がない患者さん以外、全ての症例をβ遮断薬で治療開始してもよいと考えている。β遮断薬によって生命予後を改善できれば、その後、ACE阻害薬治療を受けられる患者さんも増える。
 先述の通り、β遮断薬の開始にあたり年齢を考慮する必要はなく、「心拍数50回/分以上」、「収縮期血圧80mmHg以上」が適応の条件であると考えているが、一度は導入を試みるべきである。
 なお、CIBIS IIIにおいて一過性の心不全増悪がビソプロロール先行群で観察された点が、若干気になるところである。しかし、心不全増悪はあくまでも「一過性」であり、その後の転帰に悪影響を与えていない。さらに、臨床試験であるがゆえに増量計画が一律に決められていたため、血行動態の悪化した患者さんが増えた可能性が考えられる。患者さんの状態をみながら増量のタイミングを決定できる実地臨床では、このような代償不全を十分に回避し得ると思われる。
 現在でもすでに、心臓専門医の中には ACE阻害薬よりβ遮断薬を優先しているドクターが少なからずいらっしゃると思う。CIBIS IIIによって、β遮断薬優先という治療選択が間違っていなかったことが証明され、非常に喜ばしい。(談:9/5ストックホルムにて)

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