2005.09.20

【日本心臓病学会速報】 急性心不全の呼吸管理、注意点と臨床上のコツを披瀝

 不測の事態に備えて、家族には四肢抑制の許可をとっておくべき−−。気管内挿管による人工呼吸管理の注意点には、こうした家族への配慮を求める項目も盛り込まれていた。9月19日に行われた教育講演エキスパートに聞く「心不全」で、東京医科歯科大学の山本貴信氏(写真)は、「急性心不全の呼吸管理」と題して講演。日常診療における具体的な注意点と臨床上のコツを披瀝した。そこには、若手医師にとって明日からでも実践できるノウハウが詰まっていた。

 山本氏は、急性心不全の呼吸管理の目的と効果を解説。酸素投与のみでも末梢組織への酸素供給が可能で、嫌気的代謝の改善も図れると指摘、低酸素血症による臓器障害の改善も期待できるとした。ただ、陽圧換気ができない、換気はあくまで自力、鎮静を強くかけられない、などの不利な点もあると言及した。

 また、高濃度の酸素を投与しても低酸素血症が解消しないことは、日常診療ではしばしば経験するとも。そこで次の判断が必要になるのが気管内挿管による人工呼吸管理。山本氏は、その意義を強調しつつ「ケアしなければならないことがある」とし、鎮静の方法、感染への注意、圧外傷への注意など、具体的な事項を列挙した。

 例えば、鎮静の方法では、(1)人工呼吸器からの離脱時に覚醒不良にならないために、必要十分な深度の鎮静をかける。具体的には、体動、人工呼吸器の吸気・排気のタイミングと自発呼吸のタイミングが合わないファイティングが著しい時には、少量のフラッシュと持続投与量の増量を考える、(2)3〜6時間、まったく体動がない時は、投与量の減量を考慮する、(3)不測の事態に備えて、家族には四肢抑制の許可をとっておく−−などを挙げた。

 また感染への注意では、(1)胃からの逆流に伴う誤嚥予防のため胃チューブは入れておく、(2)口腔内ケアを積極的に行う、(3)吸引時の清潔操作、呼吸器回路の清潔を保つ、(4)肺炎が生じた場合、体位ドレナージを積極的に行う、(5)MRSA検出による隔離の可能性を想定しておく、(6)気管切開が必要になる可能性を想定しておく−−などを指摘した。

 圧外傷への注意では、(1)最高気道内圧を30cmH2O以下にする、(2)1回換気量を10ml/kg以下にする、(3)ファイティングをできるだけ起こさないようにする−−などを列挙した。

 加えて、抜管時の注意点も挙げたが、「できれば午前中のうちに抜管し、日中は眠らせないよう配慮する。つまり抜管当日の晩はよく眠れるようにする」ことも臨床上のコツだと話した。

 山本氏はその後、非侵襲的陽圧換気(NIPPV)にも言及。取り外しが簡単、気道感染の危険が低い、鎮静薬を少なくできる、などのメリットを説明した。その一方で、鎮静が強くかけられない、マスクの圧迫感がある、呑気する可能性がある、高い気道圧はかけられない、などのデメリットもあると指摘した。

 その上で、主として自発呼吸があればNIPPVの適応を考えられるとし、その導入に当たっては、例えば、鎮静への工夫が必要で、まずはメジャーランキライザーから検討する、とした。マイナートランキライザーには不穏を助長する可能性があるからだという。また、「暗くなってからでは薬が効きにくいため、鎮静剤を投与するなら消灯前にする」のも臨床上の工夫の1つと語った。

 なお、フロアからは、「80代のおばあさんにNIPPVを実施しようとしたが、義歯をはずしたところ頬がくぼんでしまい、マスクがフィットせず困っている。なにか工夫はないか」という臨場感のある質問が出された。山本氏は「顔面全体を覆うマスクもあるので試してみてもいい」のではなどと回答。全般的に、実践ノウハウを共有できる教育講演となった。(三和護、医療局編集委員)

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