2005.09.11

欧州心臓病学会2005 より  CHF患者の死亡率減少を目指して:CIBIS IIIから考える

 HOTLINEセッションにてCIBIS IIIが報告された翌日、サテライトセミナーが開催された。前日のESCトピックスの新聞記事の一面を飾ったCIBISIIIは注目度が高く、広い会場は聴衆であふれ、椅子に座りきれなかったドクター達が通路に腰を下ろして聴講する姿も多数見受けられた。概要を紹介する。


=CIBIS IIIの理論的前提=

 CIBIS IIIは、慢性心不全(CHF)に対しβ遮断薬とACE阻害薬を併用する場合、どちらの薬剤から治療を開始すべきかを検討した試験である。このような検討が行われた理論的背景をClinical Military Hospital(ポーランド)のPiotr Ponikowski氏は以下のように説明した。

 1つは、病態生理学的な理由である。心機能低下患者ではレニン・アンジオテンシン(RA)系の亢進に先立ってまず交感神経系が亢進するため(図1。クリックすると拡大された図が表示されます。以下同)、RA系よりも交感神経系を抑制するほうが有用と考えられる。

 臨床的には、β遮断薬をACE阻害薬に併用すると、ACE阻害薬では抑制できないCHF患者の突然死が著明に減少することが明らかになっている。一方、CHFに対しRA系抑制薬を先行させた方が良いというエビデンスはないにもかかわらず、現在の心不全治療のベース薬はACE阻害薬で、β遮断薬の処方頻度は低く、併用していても不十分な用量であることが多い──という問題がある。

 「ACE阻害薬服用患者の症状が良好であればあえてβ遮断薬を追加せず、症状が悪化するとACE阻害薬や利尿薬の用量・種類を変えて様子を見るため、β遮断薬を追加するタイミングを逃している」。Ponikowski氏はこのような悪循環が、β遮断薬の十分な服用を妨げていると説明した。

 これらの背景より、CHF患者に対するACE阻害薬・β遮断薬併用を、β遮断薬先行で開始する有用性、臨床的意義が期待できることから、β遮断薬先行とACE阻害薬先行とを比較するCIBIS IIIが実施されることとなった。
 
=高齢CHF患者が対象=

 CIBIS IIIは、「ビソプロロール先行」によるACE阻害薬・ビソプロロール併用と「ACE阻害薬先行」による併用を比較した無作為化試験である。

 65歳以上、NYHA分類II〜III度で左室駆出率(EF)35%以下の、安定したCHF患者1,010例が対象となった。 これら1,010例をビソプロロール先行群(505例)とACE阻害薬先行群(505例)に無作為割り付け後、最低1年間、最長2.1年間(平均1.2年)追跡した。

 従来のCHF試験と異なり、現実にCHFが多い高齢者(平均72.4歳)を対象としている点が大きな特徴だとPonikowski氏は指摘した。

=ビソプロロールによる死亡率減少が強く示唆された=

 次いでCIBIS IIIの結果を解説したのは、CIBIS III責任者の一人であるPhilippe Lechat氏(フランス)である。「ACE阻害薬先行・β遮断薬追加」で認められていた「β遮断薬による死亡率減少作用」は、「β遮断薬先行」でも認められた点を、同氏は強調した。
 
 CIBIS IIIの第一評価項目である「全死亡+全入院」の発生率はビソプロロール先行群35.2%、ACE阻害薬先行群36.8%であり(ハザード比:0.94、95%信頼区間:0.77〜1.16)、ビソプロロール先行群の非劣性、つまり同等であることが確認された。

 その他の主な結果は表の通りであり、いずれも有意差には至らなかったが、死亡率は試験全体ではビソプロロール先行群で減少傾向(12%減少)が認められた(図2)。また、単独療法中の6カ月間ではビソプロロール先行群で死亡率は28%減少(図3)、さらに1,010例全員のデータが解析に含まれる試験開始1年後の成績ではこの傾向がさらに顕著となり、ビソプロロール先行群で31%もの死亡率減少効果が確認された(図4)。

 なお、安全性、忍容性とも両群間に有意差を認めた項目はなく、同等だった。

 ビソプロロール先行群における死亡率減少効果についてLechat氏は「これまでACE阻害薬先行で認められてきたβ遮断薬の死亡率減少作用が、ビソプロロール先行でも認められたということである。これにはCHF患者にて問題となる突然死をビソプロロールが抑制していることが考えられる。CIBISIIIの結果よりビソプロロールには高い生命予後改善効果、心保護効果が期待できることが証明された」と解説した。

 本セミナーにおいて Lechat氏が示唆した、「ビソプロロール先行による更なる死亡率減少の可能性」はCHF治療において、まさに重要な治療オプションであり、今後のサブ解析結果が待たれるところである。

*CIBIS IIIの成績報告は、「Circulation」誌のホームページで閲覧できます。










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