2005.08.30

西洋人と東洋人では映像の見方や記憶の仕方が異なる、米国の研究

 異なる文化を背景に持つ人は異なる認識の仕方をしている、とする研究報告が増えている。米Michigan大学のHannah Faye Chua氏らは、米国人と中国人に同じ写真を見せて眼の動きを観察し、背景と対象物に対する視線の向け方が異なることを見出した。これは、認識処理の違いが、知覚の段階から始まっていることを示唆する。詳細は、米科学アカデミー紀要(PNAS)誌電子版に2005年8月22日に報告された。

 Chua氏らは、認識処理における文化的な差は、処理過程の最初の段階である目視パターンの差に由来すると仮定した。見方が違えば、記憶も認識も異なるはずだ。これを証明するために、同大学の大学院生から、欧州系米国人25人と中国からの留学生27人を選んで実験を行った。

 実験では、複雑な背景の中に大きな対象物(動物または無生物)が存在する写真36枚をコンピュータのディスプレイ上にそれぞれ3秒ずつ提示し、眼の動きを記録した。その後、別の作業(計算など)を行い、再びディスプレイの前に座らせて記憶を評価した。先に見せた対象物が異なる背景の中に存在する写真を見せたとき、既に見たものであると認識できるかどうか尋ねる方法を用いた。

 その結果、どちらのグループも、対象物より背景に目を向けた時間の方が長かったが、米国人の方が、対象物に迅速に目を向け、より長く注視していた。中国人は、背景を見る時間が米国人より長く、また視線をあちこちに動かす頻度が高かった。すなわち、米国人は、対象物を注視してそれ自体に関する情報を多く得る方法で認識するが、中国人は、より広範な情報を得て、背景との関係から対象物を認識すると考えられた。

 記憶については、著者たちは以前に同様の研究を行い、異なる背景との組み合わせでも、見たことがあると認識できる割合は、中国人のほうが少ないと報告している。今回も同様の結果となった。これは、中国人が背景との関係性を重視して対象物を見ていることを示すものだ。

 知覚判断と記憶における文化的な差に関する研究は、これまでも様々なアプローチで行われてきた。

 西洋人は、中心となる対象物に注目する(分析的)が、東洋人は背景にも注意を払い、背景との関係や類似性を基に対象物を認識する(全体的)傾向がある。物事を説明するときも、西洋人は対象物について集中的に説明するが、東洋人は背景の要因との関係という観点から説明する、という報告がある。

 記憶についても同様だ。著者たちは先に、水中の風景を見せ、何を見たか思い出すよう求める実験を行った。米国人は、大きく明るい色で、素早く動くものを中心に記憶していたが、日本人は、背景の岩や水の色、小さな動かないものなどについて、米国人より60%多く記憶していたという。

 本研究は、目の動きのパターンの差が、判断と記憶における文化的な差の根本にあることを示唆している。文化的に異なる人々は、たとえ環境を共有していても、目の前の現象の異なる面を見、異なる方法で記憶している可能性がある。

 本論文の原題は「Cultural variation in eye movements during scene perception」、概要は、こちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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