2005.08.03

私のがん体験 「がんになって良かった」

 病気の体験をただ「辛く、悲しいもの」と考えるのではなく、貴重な体験として人生にプラスに生かしていけるようにしたい−−。そんな願いをもとに、患者さんに交流の場を提供しているNPO法人「楽患ねっと」から、人気コラム「私のがん体験」を紹介します。今回は「がんになって良かった」と綴った福嶋佳寿子さんの体験です。

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『がんになって良かった』 福嶋佳寿子 

 「がんになって良かった。がんになって本当に幸せです」。こう言うと皆さんは負け惜しみと思われるでしょうか。ところが、これが私の今の本音です。「幸せは自分の心が決める」という言葉を聞いた事がありますが、私も以前からそう思っていました。私は、どんな境遇にあっても考え方次第で幸せと感じていられると思います。物事を考える時、二つの方法があると思います。一つは何でも悪い方に悪い方にと心配する考え方。もう一つは、何でも良い方に良い方にと考える方法です。ここでは、私自身の体験をこの2つの方法で考えてみたいと思います。

 まず一つ目は、悪い方へと考えた場合です。私には成人した二人の娘がいますが、50才近い年齢になって離婚しました。離婚後は、やっとのことで仕事を見つけましたが、そこにはワンマンで理不尽な社長がおり、毎日大声でどなられながら過ごしていました。また、一人っ子の私は、アルツハイマーの母の介護を長年に渡り一人で行っていました。その母が亡くなり、本当に一人になった途端に、今度は自分自身が進行性の胃がんとわかり、2年前に胃の全摘出手術を受けました。

 母の介護をしていたときの私は、毎日仕事をしながら、夜は母の病院へ通い、土曜、日曜は転院先を探しまわりました。ある日母が救急車で病院へ運ばれたため、急いで運転していた私は、風邪を引いていたこともあって強い咳をしたとたん、車を電信柱にぶつけてしまいました。車の前輪は大破してはずれ、車は廃車となるどの大事故でした。また、母が何度も救急車で運ばれたのは、原因不明の全身痙攣におそわれたからでした。随分と発作を繰り返してやっと、その原因がアルツハイマーから来ることがわかりました。母も私も何とか自宅で過ごしたかったのですが、痙攣の治療のためには入院が必要になり、薬の副作用で徐々に身の回りのことが出来なくなっていきました。ついには、誤嚥性肺炎のために喉から痰を吸引しなくてはいけなくなった母、どこにも自分の意思では行けなくなってしまった母を一人で介護をしていると、母がかわいそうで、胃が痛くなり胸もギューッと痛くなりました。たった一人の介護者である私が心筋梗塞にでもなったら大変と病院で調べてもらいましたが、どこも悪いところはなく、ストレスだと言われました。悲しみで胸が痛くなると言いますが、本当に息が出来なくなるくらい胸がギューッと痛くなるのだと初めて知りました。

 その母が、ある時何の前触れもなく亡くなってしまいました。約10年という長い間一緒にいたのに、これは現実のことなのか、最初は信じられませんでした。本当に悲しい時は涙も出ないものですね。私の胸の痛みは嘘の様に消えましたが、胃はますます痛くなり、今度はお腹がまるで嵐の様に痛くなって寝られなくなりました。さすがにおかしいと医師である従妹に言われ、病院で胃カメラの検査を受けました。その時医師が、「次回の受診は家族の方と来て下さい」と言われました。しかし、家族と言っても他にいないので、一人で結果を聞きに行ったところ、外科の医師が突然立ち上がって最敬礼し、「胃がんです」と告げました。最敬礼するなんてまるで「ご愁傷さまです」と私が死んだみたいじゃないかと、かえって失礼だなと感じました。胃がんだからって別に死ぬと決まったわけではないのに どうしてご愁傷さまなのかしら? それが私の第一印象でした。たまたま来ていた職場の同僚が廊下で聞いていて真っ青。医師の声がカーテンだけで仕切られた廊下の待ち合い室に筒抜けでした。

つづきはこちらへ

(まとめ:三和護、医療局編集委員)


■ 関連トピックス ■
◆ 2005.8.2 私のがん体験 「乳がんと宣告されて」

◆2005.7.29 NPO法人楽患ねっと、患者ニーズを病院運営に反映させる調査事業を展開へ

◆2005.1.7 NPO法人楽患ねっと、「患者の目から見た医療を知る」をテーマにシンポジウム

◆2004.6.18 楽患ねっと】 「いのちの授業」で伝えたいもの
「患者も大変だけど先生(医師)も大変だネ」


◆2004.5.6 楽患な人々】内田スミス あゆみさん(女性、30代) 
「私を支えてくれたのは、いろいろな人の闘病記でした」


◆2004.3.5 話題】 患者さんに交流の場を提供する「楽患ねっと」
患者さんが自ら語る「いのちの授業」を新たに展開

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