2005.08.03

抗菌薬が甲状腺ホルモン補充療法と相互作用する可能性 シプロフロキサシン投与時の甲状腺機能低下の症例がベルギーで報告

 ノルウェーStavanger大学のJohn G Cooper氏らは、レボチロキシンによる甲状腺ホルモン補充療法を受けていた患者に抗菌剤シプロフロキサシンを投与したところ、説明できない甲状腺機能低下症を起こした症例を2例経験、これらの薬剤が相互作用する可能性を示す論文をBritish Medical Journal誌2005年4月28日号に発表した。

 1例目は80歳女性で、進行した甲状腺癌の患者。甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルの低下が持続しており、125μg/日のレボチロキシン投与により遊離チロキシン値は安定していた。大腿骨の病的骨折と骨髄炎により受診。シプロフロキサシン750mgの1日2回服用を4週間実施した。患者は疲労感を訴えた。TSH値は44mIU/L(正常域は0.4-4.4mIU/L)に上昇、遊離チロキシン値は4pmol/L(12-22pmol/L)、遊離トリヨードチロニンも1.0pmol/L(3.1-6.3pmol/L)に低下していた。レボチロキシンを200μg/日に増やしても変化がなかったため、元の用量に戻し、シプロフロキサシン投与を中止したところ、甲状腺機能の検査値は、急速に正常化した。それ以外の薬剤の処方には手を加えなかった。

 2例目は79歳女性。関節リウマチ、そううつ病、心不全、慢性閉塞性気道疾患、甲状腺機能低下症があった。150μg/日のレボチロキシンで甲状腺機能は安定に保たれていた。大腿切断端の感染により受診、シプロフロキサシン500mgを1日2回投与した。3週間後、TSHが1.6mIU/Lから19mIU/Lに上昇、遊離チロキシンは22pmol/Lから13pmol/Lに低下した。レボチロキシとシプロフロキサシンの同時投与をやめ、6時間あけて投与する方法に切り換えたところ、甲状腺の機能は約3週間で元に戻った。他の薬剤はすべて持続的に使用していた。

 2人の患者のTSH値と遊離チロキシン値の変化を、横軸を時間の変化として示したグラフは、治療開始時点からの急激な変化と、シプロフロキサシン投与を中止または投与のタイミングを変えた時点からの急速な回復を示している。特に2例目では同時投与をやめた時点を中心に、グラフはほぼミラーイメージを描いている。

 得られた結果は、シプロフロキサシンとレボチロキシンが相互作用する可能性を示した。こうした報告はこれまでなかったという。相互作用の形態として最も考えやすいのは、シプロフロキサシンがレボチロキシンの吸収を妨げる可能性だ、と著者らは述べている。ラロキシフェン、コレスチポルなどの薬剤に、そうした作用が報告されている。

 これら2剤の相互作用の真相は、今後の研究および症例報告によって明らかになると思われる。甲状腺ホルモン補充療法を受けている患者に対する抗菌剤の選択は、慎重に行う必要があるだろう。

 本論文の原題は「Ciprofloxacin interacts with thyroid replacement therapy」、全文がこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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