2005.08.03

検診時血圧が高い患者は全員、自由行動下血圧を測るべき 心血管死亡の予測因子として自由行動下血圧の有益性示す、アイルランドの研究

 高血圧のアウトカム予測において、Ambulatory Blood Pressure(ABP、24時間自由行動下血圧)が健診時血圧(CBP)に優ることを示すエビデンスが蓄積されつつある。アイルランドBeaumont病院のEamon Dolan氏らは、夜間のABPの上昇が心血管死の予測において最も強力な因子であることを示し、Hypertension誌電子版に2005年6月6日に報告した。

 CBPについては、61件の前向き研究のデータのメタ分析が行われ、収縮期圧(SBP)が10mmHg高い、または拡張期圧(DBP)が5mmHg高いと、脳卒中死のリスクは40%、虚血性心疾患による死のリスクが30%上昇することが示されている。が、白衣高血圧や仮面高血圧がかなりの頻度で存在する可能性があり、測定精度には限界がある。

 アウトカム予測において、ABPがCBPに優ることを示す小規模研究は複数行われている。しかし、心血管死の予測においてABPがCBPに優ることを示した研究は、日本で行われた大規模研究(東北大学による大迫(おおはさま)研究)1件のみだ。また、夜間血圧が、昼間血圧より心血管アウトカムの予測において優れていることを示すエビデンスも蓄積されている。そこで、西洋人を対象に、全死と心血管死の予測におけるABP測定の有用性を調べる研究が、Beaumont病院血圧部門で行われた。

 1980年6月1日から2002年9月30日までの間にデータベースに登録された患者1万4414人から、ベースライン時に未治療、または、初診前1週間は降圧薬を使用していなかった患者を選出。高血圧は、ABP測定による昼間の平均収縮期圧(SBP)が135mmHg以上、または、拡張期圧(DBP)が85mmHg以上と定義した。ABPは、昼間(9〜21時)10回、夜間(1〜6時)5回以上記録した。

 測定値が完全だったのは5292人。追跡期間の中間値は8.4年。その間に646人が死亡、うち389人は心血管死(心筋梗塞、心不全、心臓突然死、慢性冠動脈疾患、脳卒中、その他の血管死)だった。心血管死群では、既知の心血管リスク因子の保有率が高かった。

 Cox回帰分析を実施。ベースラインのCBPの値、年齢、性別と、BMI、糖尿病、心臓血管系疾患の既往、喫煙などの心血管リスク因子で調整した。その結果、ABP高値は、心血管死の独立した予測因子であることが明らかになった。相対ハザード比は、昼間のSBPが10mmHg上昇で1.12(1.06-1.18,P<0.001)、夜間のSBPが10mmHg上昇で1.21(1.15-1.27,P<0.001)、昼間のDBPが5mmHg上昇で1.02(0.99-1.07、非有意)、夜間のDBPが5mmHg上昇で1.09(1.04-1.13,P<0.01)となった。同様の傾向が、全死についても見られた。夜間のABPのハザード比は、昼間のABPで調整後も有意だった。したがって、夜間ABPは、全死および心血管死の予測において昼間ABPより強力であることが示された。

 得られた結果は、心血管死の予測において、ABP測定はCBP測定より有効であること、夜間ABPの方が昼間ABPより強力な予測因子であることを示している。こうしたことからDolan氏らは、CBPの上昇が見られる全患者にはABP測定を行うべきで、夜間ABPの値を基に治療を開始すればアウトカムは向上するのではないか、と述べている。

 本論文の原題は「Superiority of Ambulatory Over Clinic Blood Pressure Measurement in Predicting Mortality. The Dublin Outcome Study」、概要はこちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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