2005.07.19

EGFR阻害剤エルロチニブ、非小細胞肺癌を対象とする臨床試験で生存期間を2カ月延長

 2004年の米国臨床がん学会(ASCO)では発表会場で拍手喝采が起きるなど、注目を集めたエルロチニブの第3相臨床試験の詳細が、New England Journal of Medicine(NEJM)誌2005年7月14日号に論文発表された。カナダPrincess Margaret病院のFrances A. Shepherd氏らによると、生存期間が2カ月延び、副作用も発疹や下痢に留まり、肺疾患発症率の上昇は見られなかったという。研究者たちは、同誌に同時掲載されたもう1本の論文(関連トピックスを参照)で、この治療の利益は、EGFR蛋白質の発現、EGFR遺伝子のコピー数および変異の有無とは無関係に、すべての患者サブセットに現れると述べている。

 エルロチニブは、ゲフィチニブ(一般名、商品名はイレッサ)と同様に、上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ活性を阻害する低分子薬だ。3相は、第1選択および第2選択治療となっている化学療法に反応しなかったステージ3Bまたはステージ4で 全身状態(PS)が0〜3の患者731人。488人に150mg/ 日のエルロチニブ、243人に偽薬を投与した。

 主要エンドポイントである全生存期間の中央値は6.7カ月と4.7カ月(0.70、P<0.001)、2次エンドポイントの無増悪生存期間は2.2カ月と1.8カ月(ハザード比0.61、P<0.001)となった。治療群では、咳や呼吸困難、痛みなどが悪化した期間の有意な短縮も見られ、QOLも高かった。

 ゲフィチニブでは副作用として、間質性肺炎が懸念されている。今回のエルロチニブ3 相では、治療群と対照群の間で、肺炎と肺線維症の発生率に差は無く、肺炎での死亡は両群1人ずつだった。エルロチニブの主な副作用は、発疹(12%)、下痢(5%)などで、治療群の19%で投与量を減らし、5%については投与を中止した。対照群でも、用量減少が必要だった患者が2%、投与中止が2%いた。著者たちは、治療群で副作用の発生率が高い理由の一つとして、追跡期間が有意に長かったことをあげている。

 今回の試験で、エルロチニブ群の奏功率は8.9%、偽薬群では1%未満(P<0.001)、奏功期間の中央値は7.9カ月と3.7カ月だった。奏功率8.9%は、エルロチニブおよびゲフィチニブについてこれまでに報告されている値とほぼ同様だ。また、対象となった患者に差はあるが、生存期間延長効果は、エルロチニブの方が高かった。

 これまで、対照群をおいた臨床試験が行われていなかったため、今回初めて、エルロチニブ治療が緩和治療より優れており、臨床的に意味のある生存期間延長をもたらすことが示された。Kaplan−Meier法による生存率曲線は、生存期間の中間値が2カ月延長、1年間生存する患者の割合は、エルロチニブ群で31%、偽薬群で22%を示した。生存期間の2カ月延長は、ドセタキセルを第2選択薬として用いた場合に得られた結果と同様だ。ドセタキセルは、プラチナ製剤による治療後に病気が進行した患者に、生存期間延長をもたらすことができる唯一の治療薬だ。

 なお、ゲフィチニブは、EGFR遺伝子に特定の変異が存在する患者サブセットに有効と言われているが、エルロチニブについては、今回の被験者の詳細な分析により、EGFR遺伝子の変異と生存利益は無関係であることが明らかになった(関連トピックスを参照)。

 本論文の原題は「Erlotinib in Previously Treated Non−Small−Cell Lung Cancer」、概要は、こちらで閲覧できる。 ASCO2004における発表については、既報を参照のこと。(大西淳子、医学ジャーナリスト)


■ 関連トピックス ■
◆ 2005.7.19 非小細胞肺癌に対するエルロチニブの生存利益はEGFRステータスとは無関係、3相臨床試験結果の分析から


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