2005.07.15

遺伝子治療の画期的技術になるか? タカラバイオが7個のRNAインターフェラーゼを同定 

 特異的にmRNAを阻害するRNAi(RNA干渉)の臨床応用が海外で始まり注目を集めている。しかし、そのRNAiを超える可能性のある技術の開発がタカラバイオで進められており、遺伝子治療などへの応用が期待されている。それが、RNA干渉酵素(RNAインターフェラーゼ)だ。

 DNAの特定配列を認識して切断する酵素である制限酵素は、分子生物学のツールとして、広く利用されている。この制限酵素のmRNA版といえるのがRNAインターフェラーゼ。特定の配列を持つmRNAだけを分解する酵素だ。元々は大腸菌からMazFという名前のたんぱく質がもつ活性として同定されたのが最初の例だが、タカラバイオは、この半年ほどに積極的に探索を行い、既に7つのRNAインターフェラーゼを見つけ出した。その中には特定の6塩基配列を識別して切断するものもあるという。タカラバイオ社長の加藤郁之進氏が7月14日に開催された記者懇談会で明らかにした。

 RNAインターフェラーゼは遺伝子治療への応用が期待できる。RNAインターフェラーゼ遺伝子を、遺伝子治療で細胞に導入し、活性化させることで遺伝子が導入された細胞だけを除去できる。先日、タカラバイオは、米Becton Dickinson(BD)社のバイオ関連試薬部門である「クロンテック事業」を買収すると発表しているが、クロンテックは遺伝子発現のスイッチオン、オフに利用できるテトラサイクリンを利用した系の権利を所有している。テトラサイクリンの系は、RNAインターフェラーゼの遺伝子治療応用にも活用できそうだ。またHIVのtat遺伝子とRNAインターフェラーゼ遺伝子を組み合わせることでエイズの遺伝子治療に応用することも可能だ。

 タカラバイオは、siRNA(RNA干渉を起こす短いRNA断片)と比べて、酵素であるため特異性が高いこと、ターゲティングのためのRNAを必要としないこと、RNA干渉酵素発現ベクターの導入で持続的な抑制効果が期待できることなどの利点があるという。mRNAの特異的分解を導くsiRNAに取って代わる可能性は十分にありそうだ。(横山勇生)


**RNA干渉酵素とは?
 RNA干渉酵素は、米Robert Wood Johnson Medical School教授の井上正順氏が命名したもの(Molecular Cell Vol.12,913-923,October,2003)。大腸菌にMazFという毒素たんぱく質がある。MazFはMazEたんぱく質と結合した状態では不活化しているが、MazEがはずれると活性化、たんぱく質の合成を阻害し細胞死を誘導することが分かっていた。

 井上氏らは、このMazFがmRNA中のACAと並んだ塩基配列を特異的に認識しその5'末端側を切断することで機能を発揮していることを発見した。ほとんどのmRNAは、配列中にACAに存在しているため、mRNAが分解されたんぱく質の生合成が抑制されるわけだ。さらに、井上氏らはMazFによるmRNA分解系がほ乳類細胞でも働くという基礎的なデータを得ている。また、井上氏らはPemKというたんぱく質もmRNAの特異的3塩基を認識して分解することも発見した。

 MazFなどの応用では、遺伝子組み換えたんぱく質の大量生産系への利用も期待できる。まず、大量に発現させたい遺伝子のmRNA中に存在するACAという配列を、同じアミノ酸をコードするがACAとは異なる配列に置換する。そして、MazF遺伝子と共に細胞に導入すると、MazFにより目的たんぱく質のmRNA以外のmRNAはほとんど分解されるため、目的たんぱく質だけが大量に得られる。実際、井上教授らは大腸菌で特定たんぱく質の大量生産に成功している。タカラバイオはたんぱく質生産に応用するビジネスプランを検討中だ。

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