2005.07.15

運転中の通話、ハンズフリーでも事故リスクは3.8倍−豪州の研究

 交通事故の増加を防ぐため、運転中の携帯電話使用については、手持ち通話を禁止している国が多い。オーストラリアで、実際に事故を起こして病院で手当を受けた運転者を対象に調査研究で、携帯電話の手持ち使用では事故リスクが4.9倍、ハンズフリーでも3.8倍になることが明らかになった。豪Sydney大学のSuzanne P McEvoy氏らが、British Medical Journal誌電子版に2005年7月12日に報告した。

 運転中の通話の危険性を調べた研究の多くは、少数のボランティアを対象としたシミュレーションなど、実験的な条件で行われている。得られた結果は、通話による運転能力の低下を示した。能力の低下は注意散漫から来ており、ハンズフリー通話でも注意が散漫になることは示されている。

 しかし、自分の車を公道で運転するドライバーを対象とする研究は少ない。また、事故時の携帯電話の使用の有無に関する確実な情報を得ることは難しい。そこで研究者らは、運転者自身が治療を必要とするけがを負うレベルの交通事故と、運転中の通話の関係を調べるケース・クロスオーバー研究を行った。

 豪州で手持ち通話が禁止された後の2002年4月〜2004年7月に、Perthで交通事故を起こし、病院の救急部門で治療を受けた1625人の中から、条件を満たした941人に面接調査を実施。744人については携帯電話の通話記録を入手した。

 通話が事故に関係する可能性のある危険時間帯を事故前10分間とし、対照時間帯を事故の24時間前、72時間前、7日前の同時刻の10分間とした。これらの対照時間帯に1回以上運転していたのは456人で、3回の対照時間帯に運転していた人の数はのべ801人となった。

 456人中男性は192人(42.1%)手持ち通話タイプの携帯電話保有は218人(47.8%)、完全なハンズフリー機器を保有が45人、イヤーホーン・タイプ164人(35.9%)、ヘッドセット20人(4.4%)、スピーカーホン9人(2.0%)だった。

 運転中の通話は、126人(27.6%)が全くしない、225人(49.3%)がたまにする、時々は60人(13.2%)、しばしばが45人(9.9%)。ハンズフリー通話の割合は、運転中の通話がたまにある225人のうちの134人(60%)から、しばしば通話する45人のうちの37人(82%)まで、通話頻度が高まるにつれ、増えていた。外傷の種類と程度は詳細に調べたが、全体として軽-中度のけがが多かった。

 事故前の電話の使用については、携帯電話に残っている通話記録と会社から提供を受けた通話記録を参照、通話相手に対する確認などを実施し、事故前10分間に通話していたのは40人(9%)と判断した。対照時間に運転していたのべ801人については、携帯電話使用者の割合は3%。ハンズフリー通話は、事故前の通話では13人、対照時間の通話では8人だった。

 これらの情報をもとに分析すると、事故前10分間の携帯電話使用は事故発生リスクを4.1倍(95%信頼区間、2.2-7.7、p<0.001)にしていた。性別、年齢、携帯電話のタイプは、事故リスクに影響しなかった。手持ち通話だけに限定した場合、オッズ比4.9(4.6-15.5)ハンズフリー通話のオッズ比は3.8(1.8-8.0)で、ハンズフリー通話も安全とはいえないことが明らかになった。

 米国の研究では、法律が適用されてから数カ月は手持ち通話が大きく減るが、その頻度はやがて元に戻ることを示した。したがって、法律遵守を呼びかける長期的なキャンペーンは不可欠だ。また、ハンズフリーでも事故リスクがあまり減少しないことが今回明らかになったが、運転中の通話を完全に禁止することは困難と考えられることから、著者らは、Bluetooth対応の携帯電話と、車載ハンズフリーシステムを利用した完全なハンズフリー・システムなどの普及が必要とみている。同乗者と会話するように通話できれば、事故リスクは減らせるだろう。

 本論文の原題は「Role of mobile phones in motor vehicle crashes resulting in hospital attendance: a case-crossover study」、概要は、こちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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