2005.06.21

埋め込み型除細動器使用者では魚油サプリが逆効果?  心室頻拍がある患者で不整脈リスクが有意に上昇

 海のほ乳類や魚から豊富なオメガ-3多価不飽和脂肪酸(PUFAs)を摂取しているエスキモーには心臓死が極めて少ない。この事実が明らかになって以来、オメガ-3PUFAsの抗不整脈作用を示唆するエビデンスが蓄積されてきた。米Oregon健康科学大学のMerritt H. Raitt氏らは、持続性心室頻拍(VT)または心室細動(VF)歴のある埋め込み型除細動器(ICD)使用者に、オメガ-3PUFAsを主成分とする魚油を投与する研究を行ったところ、予想に反する結果を得た。魚油はVT/VFリスクを減じないばかりか、一部の患者には催不整脈作用が見られた。詳細は、Journal of American Medical Association(JAMA)誌2005年6月15日号に報告された。

 研究グループは、1999年2月から2003年7月までの間、米国の6医療機関で二重盲検無作為割付比較対照試験を実施した。追跡期間の中間値は718日(20-828日)だった。対象は、埋め込み型除細動器(ICD)を使用しており、過去3カ月の間に持続性VTまたはVFを起こした患者200人。

 介入群には魚油1.8g/日(オメガ-3PUFAsを72%含有、内訳はEPA42%+DHA30%)、対照群には偽薬(オリーブ油73%、パルミチン酸12%)を投与。被験者は米国心臓協会のステップ1低脂肪ダイエットを行っており、魚の摂取量は変えないよう指導された。

 主要エンドポイントは、VT/VFによる初回のICD作動までの期間とした。ICDが作動したかどうかはメモリーを見て確認した。ICD作動因はVT、VF、心房細動、上室性頻拍、過剰感知(横隔膜筋電位やT波などノイズを誤って検知してしまう)などだった。

 介入群の赤血球膜のオメガ-3PUFAs含有量の平均は、ベースラインの4.7%から3カ月後には8.3%に増加した。対照群には変化は見られず、差は有意だった(P<0.001)。6カ月、12カ月、24カ月の時点で、VT/VFによる初回のICD作動を経験していた患者の割合は、介入群でそれぞれ46%、51%、65%、対照群では36%、41%、59%(P=0.19)。ベースラインでVTがあると確認されていた患者に限定すると、介入群で61%、66%、79%、対照群では37%、43%、65%となった(P=0.007)。ハザード比を求めると、1.76(1.15-2.66)で、介入群に有意なリスク上昇が見られた。VFについては、魚油によるリスク上昇は見られなかった。2年間のVT/VFの発生回数も調べたが、介入群は平均3.5回、対照群は2.2回だった(P<0.001)。

 著者たちは予想に反した結果の説明を試み、最大の原因は、エンドポイントを心臓突然死でなくVT/VFイベントにしたことにあるのではないか、と述べている。VFは突然死の予測因子ではないという報告もあるという。今回の結果は、オメガ-3PUFAsによる心臓突然死予防効果は、VT/VFの抑制を通じて得られているのではないことを示唆している。

 いずれにせよ、ICD使用者で心室頻拍がある患者は、魚油および脂肪分の多い魚の頻回摂取を避けた方がよさそうだ。

 本論文の原題は「Fish Oil Supplementation and Risk of Ventricular Tachycardia and Ventricular Fibrillation in Patients With Implantable Defibrillators」、概要は、こちらで閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. ズバリ!up to date問題の出題のヤマはこ… 総合内科専門医試験 「一発合格」への道 FBシェア数:39
  2. 50歳男性、夜中の意識障害、痙攣 日経メディクイズ●心電図 FBシェア数:0
  3. 食べられない高齢者にはこう介入する Dr.西&Dr.宮森の「高齢者診療はエビデンスだけじゃいかんのです」 FBシェア数:159
  4. プライマリ・ケア連合学会が成人までカバーしたワク… 学会トピック◎第9回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 FBシェア数:52
  5. 「学会の指針を転載したら金を払え」は正当か 弁護医師・田邉昇の『医と法の視点』 FBシェア数:127
  6. その図表、そんなタイトルじゃ伝わりませんよ 英文校正者が教える医学論文執筆の極意 FBシェア数:37
  7. 85歳の癌患者に標準治療を行いますか? リポート◎高齢癌患者の治療適否は予後とQOLへの影響で判断 FBシェア数:138
  8. 病理、リハビリテーション科、臨床検査の研修プログ… Cadetto Special●新専門医制度、各科の動向 FBシェア数:24
  9. 慢性的な膝の痛みに効く漢方 幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」 FBシェア数:19
  10. 大阪北部で地震発生! 救急医の1日 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:169
医師と医学研究者におすすめの英文校正