2005.06.13

【裁かれたカルテ】 糖尿病ケトアシドーシスに起因する多臓器不全で死亡 被告医師の判断・処置に誤り、7000万円余の賠償認める ■事件概要

 訴えたは、死亡した患者(1974年生まれの男子)の両親。訴えられたのは、内科などを診療科目とする被告病院を開設する医療法人と診療に当たった医師D。

 死亡した患者Aさんは、2000年3月半ばから胃部に不快感や疼痛があり、徐々に固形物がのどを通らない状態となっていた。月末ころには、呼吸困難、吐き気、動悸症状が出現した。

 Aさんは、3月29日夜に嘔吐、翌30日朝にも嘔吐し身体が動かず、ろれつが回らなくなるなどした。このため、婚約者が運転する車に乗せられて病院に行くことになり、被告病院で診察を受けることになった。

 Aさんは、2000年3月30日午前10時30分ころ、被告病院に到着した。しかし、自力で歩行できなかったため、両親らが車いすに乗せて移動させ、同病院の医師の診察を受けさせた。

 この時点でAさんは、顔がむくんで青白く、口唇からは血の気がうせており、また目にはくまができ、ろれつが回らず、ぐったりとして意識も明瞭でなかった。また、医師の診察に対してもうまく言葉を発することができない状態だった。そのため、医師によるAさんの食生活や症状などについての問診に対しては、主に婚約者が代わって回答した。

 その後、Aさんは、被告病院に入院。持続点滴のため左鎖骨下から中心静脈注射(IVH)が行われ、排尿バルーンの処置がとられた。この時点で、主治医となった被告医師Dが、Aさんの両親らに対し、入院診療計画書を示しながら、Aさんの血糖値が 500以上であること、病名は「脱水、糖尿病ケトアシドーシス、消化管通過障害疑い」であること、治療計画は「持続点滴、インスリン投与」であり、2週間程度の入院が必要であることなどを告げた。

 3月 30日、Aさんは、ひっきりなしに水を欲しがる状況だった。そこで、母親が看護師に対し付添いの必要性について質問したところ、完全看護であるからその必要はないとの回答だった。Aさんは、午後8時30分ころ、ナースコールをして苦しいと訴え、その後も頻繁にナースコールをしていた。

 午後10時45分ころ、Aさんは、排尿バルーンを外し、IVHも外しかけてベッドのわきに座っている状態になり、午後10時55分ころにはIVHを外してしまった。その報告を受けた被告医師Dは、自宅から電話で看護師に指示をして、抗精神病剤であるセレネースをAさんに投与させた。

 翌3月31日。Aさんは、午前3時ごろ、病室の前に座り込んでいた。その後母親や長男がAさんの病室に出向いたが、Aさんは、長男がだれであるかも分からない状態であり、ひっきりなしに水を欲しがっていた。また、その後Aさんは、就寝中、肩で大きく息をし、口を開けたまま舌が奥に入ってしまうような状態であり、大きないびきをかいていた。

 Aさんの母親は、午前8時30分ごろ、被告病院内で朝食をとっていたところ、看護師から「Aさんがベッドから降りているのですぐに来てくれ」と言われ、病室に駆け付けた。その時、Aさんは既にベッドに横たわっていたが、おむつ1枚を付けただけの裸の状態だった。

 国民健康保健扱いの手続を済ませるため外出していた母親は、午前11時30分ごろ病室に戻った。その時のAさんの状態は昏睡状態のように見えた。Aさんは何も言わなかったが、母親が「お水は」と聞くと、わずかにうなずいた。

 母親らは、午後2時ごろ、Aさんの病室に来た看護師から廊下で待つように言われ、その後更にロビーに行ってほしいと言われ、移動した。間もなく、Aさんの病室の外の廊下に看護師の数が増え、人工呼吸用のバッグを持った看護師が廊下を走っていた。母親が直ちにAさんの病室に駆け付けると、Aさんはアンビューバッグによる人工呼吸や心臓マッサージを受けていた。

 午後3時20分ごろ、Aさんは、自発呼吸が出現したことから個室に移された。

 Aさんは、2000年4月1日午前10時25分ごろ、被告病院から別の病院に転院となり、同病院の集中治療室で治療を受けた。しかし、同月4日午後7時ごろ、糖尿病ケトアシドーシスに起因する多臓器不全により死亡した。

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