2005.06.13

【裁かれたカルテ】 糖尿病ケトアシドーシスに起因する多臓器不全で死亡 被告医師の判断・処置に誤り、7000万円余の賠償認める

 糖尿病ケトアシドーシスに起因する多臓器不全で死亡した事例で、遺族らは、被告医師に過失があったためとして、8000万円余の損害賠償を求め提訴。裁判所は、被告医師の判断・処置に誤りを認め、7000万円余の損害賠償を認める判決を下した。

 裁判では、被告病院で行われた治療が適切だったかどうかが最大の争点となった。具体的には、(1)輸液、インスリンなどの量が適切だったか、(2)患者がIVHを外した際に適切な処置をしたか−−の2つ。

■事件概要(詳しくは有料ネット講座「まさかの時の医事紛争予防学」で提供しています)。

■輸液量はそもそも大幅に不足していた

 裁判所はまず、輸液量に着目。事件当時の医療水準では、糖尿病ケトアシドーシスに罹患した通常の患者については、症状の大幅な改善が認められない限り、1日当たり少なくとも5000mL程度の輸液量が求められているとした。また、Aさんが事件当時、約130kgという肥満体だったことを考えると、この標準量をさらに上回る量の輸液が必要だったと認定した。
 
 しかし、被告医師が試みた輸液の総量は、輸液開始から被告病院を退院したときまでの47時間余りで、多くても4420mLにすぎなかったため、「必要とされる輸液量を大幅に下回っていたものと評価せざるを得ない」と判断した。Aさんが自らIVHを外して、看護師によって輸液が再開されるまでの約12時間は、輸液が全く行われなかった事実にも言及し、「輸液量は4420mLをさらに下回っていた」と断じた。

 結局、「輸液量はそもそも大幅に不足していた」のであるから、この点で「被告医師Dの判断及び処置に誤りがあった」と結論付けた。

 さらには、被告医師Dは、AさんがIVHを外したとの連絡を受けた時点で、輸液を再開するよう指示せず、輸液がなされない状態を漫然と放置したと認定し、この点においても「判断及び処置に誤りがあったものといわざるを得ない」と結論付けた。

 これに対して被告らは、入院時、Aさんの既往病歴や病態が不明だったため、治療の当初に1時間当たり500ないし1000mLもの輸液を行うと急性心不全や肺水腫を起こす可能性もあったことから、多量の輸液を行うことができなかったなどという主張を展開した。

 しかし、判決では、糖尿病の治療を開始するに当たって情報が不足していたとは認められないとし、Aさんの既往病歴や病態が不明だったことを理由に輸液量を少なくしたことを正当化できないと被告側の主張を退けた。

 輸液に関しては、(1)AさんによるIVHの抜去後、看護師らに対しIVHの再挿入を指示せずに放置した、(2)その結果Aさんに試みた輸液量が総量として不足していた−−の2点で、「被告医師Dに過失があった」と判断した(詳しくは有料ネット講座「まさかの時の医事紛争予防学」で提供しています)。

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