2005.06.10

【ピックアップ】 ダイエット用健康食品禍、惨禍は繰り返す

 中国製ダイエット用食品「天天素」による健康被害は、東京都が5月26日に死亡例を発表以降、6月9日までに全国で111件を超えてしまった。なぜ同じような事件が発生したのか−−。2年前、MedWaveの「医師も戸惑う健康情報」の著者である小内亨氏は、「ダイエット用健康食品禍、惨禍は繰り返す」と題するコラムを寄稿した。ここに再掲し、問題点を再確認できたらと願う。(三和護、医療局編集委員)

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 中国製ダイエット用健康食品にて死亡例が出て以来、続々と健康被害例が報告されている。2002年7月20日に厚生労働省の発表によれば被害者は総計124人(内死亡例4人)であるが(1)、ある報道によれば被害者は同じ時点で168人と報告されている。ところが、毎日のように報道される被害者数は変わるし、報道機関によりその数字も異なる。行政側もマスメディアも中国製ダイエット用健康食品による被害実態を把握しきれていないようだ。その理由は、それぞれの自治体、国がこのような健康食品による被害、副作用についてきちんとモニターしていなかったためである。

 たとえば、食中毒の事例があれば医療機関はただちに保健所に届け出る。医薬品で副作用が出れば製薬会社を通じて厚労相に報告される。しかし健康食品の場合は、今回のように死亡例でもない限り、今まで医療機関が健康被害を行政に報告することはほとんどなかった。それは、健康食品による被害事例を報告するシステムが機能していなかったからである。その後、続々と被害例が増えてきているのは、マスメディアや行政からの問い合わせにより各医療機関のもっている被害事例が少しずつ掘り起こされているからである。

 被害者の側でも、医療機関の側でも健康食品による健康被害の可能性についてはほとんど認識されていなかった。健康食品を服用後体調が悪くなっても、被害者はその原因が健康食品にあるとは思い至らないこともある。また、もしそれが健康食品によるものと認識されても、中止することにより症状が改善すれば、そのままになってしまう。ある被害者は、国民生活センターや消費者センターなどに相談するかも知れない。しかし、因果関係がはっきりしない限り、商品名が公表されることはない。それは被害事例として、統計の数値として示されるにすぎない。国民生活センターや消費者センターに集められた健康食品による被害情報が医療機関にフィードバックされることは稀である。

 たとえ健康食品による健康障害のため、患者として医療機関に受診したとしても、その人が健康食品摂取について医師に話さなければ、それが健康食品により起こったと医師は考えないだろう。医師も健康食品による健康障害を想定していなければ、健康食品利用歴を問うこともない。その結果、原因不明の肝障害などとして対処されるだけで、健康食品中止後状態が改善すれば、その情報は表に出ることはない。

 現行のシステムでは、健康食品はあくまでも食品であり、副作用、健康障害をほとんど起こさないという前提のもとにできあがっている。健康食品に薬事法が適応されるのは、効能効果を表示した場合や医薬品が混入していた場合などに限られる。健康食品はあるときは食品と扱われ、あるときは医薬品のような扱いを受ける。健康食品を特別なカテゴリーとして認めない限り、その規制は難しいかもしれない。

 せめて今回の事件を教訓に、1)医療機関、保健所、行政、国民生活センターなどが連携し、健康食品が原因として疑われる健康障害例を集積し、2)薬理学的、疫学的アプローチなどを用いて因果関係を解明し、3)その結果を医療機関や消費者へ直ちに情報提供できるようなシステムを構築する必要がある。

 今回の事件が、輸入健康食品による特別な事例であるとして片付けられれば、同様の惨禍は繰り返されるに違いない。


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