2005.06.09

飛行機の騒音は小学生の読解力を低下させる−−欧米の研究で判明

 飛行機の騒音に曝されると子どもたちの読解力や記憶力が落ちる−−こんな研究結果が明らかになった。空港や軍事基地の近くに住む人々にとっては、新たな不安の種になりそうだ。英London大学Queen Mary校のStephen A. Stansfeld氏らがLancet誌2005年6月4日号に報告した。

 研究者らは、英国、オランダ、スペインの主要空港の周囲に存在する89の小学校に通う9〜10歳の児童2844人を対象に、2002年に調査を行った。

 まず、教室の内外で、航空機の騒音と自動車の騒音のレベル(dBA)を測定した。騒音の中間値は、航空機が52dBA、自動車が51dBAだった。次に、児童の認識能力や健康状態を評価する試験と質問票による調査を実施した。読解力の評価には、標準化された平均的な検査を使用。エピソード記憶(再認、概念の想起、情報の想起)の能力は、CDに録音された2つの物語を聞かせた後に手がかり再生(cued recall)テストを行って評価。集中力の持続はToulouse Pieron テストで、作業記憶と展望的記憶はスピーチ記憶課題により評価した。

 さらに、児童に質問票を持ち帰らせて、両親に子供の肉体的、精神的な健康状態と、両親の社会経済的な状態、学歴、人種などについて尋ねた。回帰分析を行い、標準偏回帰係数(ベータ係数)を求め、認識能力と健康に対する騒音の影響の大きさを評価した。

 この結果、慢性的な航空機騒音については、暴露騒音レベルに応じた読解力(p=0.0097)と再認能力(p=0.0141)の低下が見られた。騒音が一定以上になると不快感(いらいら)は急速に増した(p<0.0001)。これらの関係は、母親の学歴、社会経済的状況、本人の長期間に渡る病気などで調整後も有意だった。

 自動車騒音への暴露は、予想に反して、エピソード記憶の向上をもたらした(概念の想起、p=0.0066、情報の想起、p=0.0489)。が、不快感(いらいら)は騒音レベルに比例して増加した(p=0.0047)。

 一方、いずれの騒音の場合も、その他の能力および自己申告による健康状態、精神的健康全般には影響していなかった。

 自動車の騒音と記憶力の向上の関係については、著者らは、騒音が覚醒レベルを高めるとは考えられないが、航空機騒音に比べ、騒音レベルに変化が少ないことが、結果に関与しているかもしれないと述べている。

 本論文の原題は「Aircraft and road traffic noise and children's cognition and health: a cross-national study」、概要はこちらで閲覧できる(Lancet誌のサイトへの登録が必要です)。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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