2005.05.18

【日本糖尿病学会2005】糖尿病の治療・看護に関するインシデント報告−−富山医科薬科大の研究

 インシデントには「思い込み」「勘違い」「うっかり」が目立つ−−。糖尿病の治療・看護に関するインシデント分析から、ヒューマンエラーが少なくないことが分かった。富山医科薬科大学の安井真希氏らのグループが5月14日のポスターセッションで発表した。

 安井氏らの研究グループは、医療事故防止に役立つ切り札として期待されているインシデント報告に取り組み、その分析から問題点を浮かび上がらせ、対策の立案に生かしている。今回の発表では、富山医科薬科大学附属病院東4階病棟が2001年度から2004年度までにまとめたインシデント報告書から、糖尿病の治療と看護に関する事項を抽出し、その分析を行った。なお、調査に当たっては、報告者の氏名、患者名など個人が特定できないよう配慮しプライバシーを厳守する措置をとった。

 その結果、2001年度から2004年度までの糖尿病の治療と看護に関するインシデントは、合計で45件あった。内訳は、インスリン治療に関するものが15件、内服治療に関するものが8件、検査・手術に関するものが4件、食事療法に関するものが1件、血糖測定に関するものが17件だった。

 それぞれの内容は、以下のようなものだった。

◆インスリン治療に関するもの
 インスリン注射の打ち忘れ
 インスリン単位の間違い
◆内服治療に関するもの
 内服の飲み忘れ
 内服の間違い
◆検査・手術に関するもの
 延食事の内服忘れ
 インスリン注射忘れ
 手術時のスケール忘れ
◆食事療法に関するもの
 配膳の間違い
◆血糖測定に関するもの
 血糖測定のし忘れ
 血糖測定指示の見間違い

 具体例としては、夕方からインスリン単位が減量になっていたが、患者自身が減量単位を聞いていなかったため、以前の単位で注射したケースがあった。

 この場合は、(1)患者はインスリン量減量とは聞いていたが、単位は言われなかったため、いつもの単位を打っていた、(2)看護師が患者と単位数を確認しなかった、(3)看護師がインスリン減量の単位を患者に知らせていない。指示書にのみ記載し、看護師に伝えていない−−などの問題点が浮かんだ。その理由としては、(1)患者は言われていないためいつもの単位で良いと思った、(2)看護師は患者が分かっていると思ったから、(3)減量の単位を患者に知らせていないのは看護師管理だと思っていた−−などとするものだった。

 結局、対策としては、インスリン単位表(写真)を作成し、患者のベッドサイドに置いておくことになった。運用上は、インスリン単位表を軸に、単位の変更時には単位まで患者に伝えることやインスリンの注射に関わるスタッフは患者に単位数まで言ってもらうなどの工夫をした。

 全体の考察によると、エラー行動の因子として、(1)情報の受容と確認のエラー、(2)忘却によるエラー、(3)意識の中断によるエラー、(4)習慣行動によるエラーなどが明らかになった。

 また、エラーを起こすときの状態としては、(1)相手が知っていると思っていた、(2)いつもの通り慣れた操作をした、(3)他に注意をとられた、(4)自分で思い込み、確認しなかった、(4)予測や先入観のため、情報を間違って受け取った−−などが浮かび上がったという。

 医療現場でもエラーはある程度の確立で発生している。これを皆無にするには、まずエラーの実態を把握し、その情報を共有していくことが重要だ。演者らは「インシデントから学んだことを生かし、日常業務を繰り返し見直すことが必要である」と指摘している。取り返しのつかない事故を未然に防ぐためにも、こうした不断の努力が欠かせない。(三和護、医療局編集委員)


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