2005.05.18

【ASCO2005速報】 乳癌医療における抗体医薬の重要性高まる ハーセプチンの報告に万雷の拍手

 乳癌治療用の抗体医薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)を術後補助療法として使うことによって患者の生存率が高まるとの試験結果が、5月16日に開催された緊急セッション「Advances in Monoclonal Antibody Therapy for Breast Cancer」で報告された。

 加えて、2004年に進行結腸直腸癌での使用が認められたベバシツマブについても、やはり乳癌治療に有望との臨床試験の結果が報告され、注目された。

 乳癌治療の早期からトラスツズマブを使用するかどうかは、ここ数年の乳癌治療の最大の問題だった。発表が行われた会場では聴衆の拍手が鳴りやまず、口笛も吹かれるなど祝賀ムードに包まれた。

 米国立癌研究所(NCI)とGenentech社のグループは、手術前の乳癌患者を2群に分け、一方の群にAC(ドキソルビシン/シクロフォスファミド)からパクリタキセルという治療を、もう一方の群にAC(ドキソルビシン/シクロフォスファミド)からパクリタキセル+トラスツズマブという治療を行い、両者の治療成績を比較した。3年目、4年目の無病生存率では、トラスツズマブ使用群がそれぞれ87%、85%だったのに、非使用群は74%、67%と劣っていた。3年目、4年目の生存率でも、トラスツズマブ使用群が94%、91%であったのに、非使用群では92%、87%とやはり劣勢だった。

 また、血管内皮増殖因子(VEGF)を中和して、癌組織が誘発する血管新生を抑えるベバシツマブでは、進行乳癌患者を対象にパクリタキセル単独使用群とパクリタキセル+ベバシツマブ併用群の比較が行われた。無病生存期間はパクリタキセル群が6.1カ月だったのに対して、パクリタキセル+ベバシツマブ群では10.97カ月と大きく上回った。ベバシツマブでは一般的に血圧上昇が問題になるが、この試験でも、パクリタキセル+ベバシツマブ群の13.3%に比較的症状が重い高血圧症状が現れたという。「高血圧発現の原因究明もベバシツマブ医療の大きな課題」と指摘された。

 今回の発表で、「乳癌分野でのトラスツズマブの早期使用の方針が固まった」といえるだろう。またベバシツマブについても、今後臨床研究が蓄積されて、乳癌治療での位置づけが明確にされていくことは間違いない。また、欧米での動きを日本の医療界や厚生労働省、さらに医療の主役である患者らが、どのように評価していくのかも注目される。

 トラスツズマブは乳癌治療を劇的に変えつつある画期的な治療薬だ。しかし、一方で抗体が標的とする抗原が、全乳癌患者の20〜30%にしか発現しておらず、残りの乳癌患者には効果が期待できないということも事実。トラスツズマブに耐性の乳癌にどのような治療方針で臨むべきかという点も、今後検討されていかなければならない。画期的な治療薬トラスツズマブの登場は、乳癌医療に新しい課題をもたらしたということもできる。(小崎丈太郎、日経メディカル開発



訂正
・ハーセプチンの一般名称であるtrastuzumabを「トランスツズマブ」と表記しましたが「トラスツズマブ」に訂正致します。

・第1段落で、「現在認められているよりも早期の手術前に」とありましたが誤りで、正しくは「術後補助療法として」でした。お詫びして上記のように訂正いたします。

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