2005.05.17

【ASCO2005速報】 会長講演:「医療の質向上がASCO発展に不可欠」−社会的活動への注力訴える

 米国の主要学会では、年次学術集会で会長の座を引き継ぐのが通例、2004〜2005年度のASCO会長であるDavid Johnson氏は5月15日に任期を締めくくる会長講演を行い、医療保険償還、新薬開発承認の促進、研究資金調達、倫理問題など、社会的な問題に力を注ぐ必要性を会場を埋めた会員医師に強く訴えた。以下に講演の要点をまとめた。(MedWave)

 これまで米国保健省の抗癌剤開発強化プログラムにより、5年間にわたって関連予算が倍増されてきた。これが終了することで抗癌剤開発が停滞しかねないという懸念を持っている。米国の高齢者向け公的健康保険であるメディケアについても、2003年にメディケア近代化法が制定されたことで、抗癌剤の償還(カバー)範囲が制限される可能性がある。こうしたことから、学会として政府へのロビー活動や一般社会への宣伝活動を強化する方針だ。

 その一方で、抗癌剤を含む癌治療に費やされる医療費について、国民的理解を得るため、新しい抗癌剤を使用する費用対効果が証明されることや、臨床腫瘍医による癌治療の質の高さを学会として保証していく活動が重要になっている。

 ASCOはこれまで、NICQ(National Initiative on Cancer Quality)やQOP(Quality Oncology Practice Initiative)などによって、癌診療の質向上に取り組んできた。特に、政府に義務付けられる前に、自主的に診療の質向上活動を開始したことは有益だった。7人のメンバーによる「医療の質に関する諮問会議(Quality Advisory Group)」を編成するなど、地域や医師による診療格差・成績格差の問題の解決に学会として取り組んできたことも紹介した。

 米国では、議会などで、「Pay for Performance(診療の質や成績への対価としての保険償還=支払い)」という考えが高まっている、学会としても、データに基づいた宣伝活動をさらに強化する意向を持っている。臨床腫瘍医には患者中心の視点が必要だ。薬を売るのではなく、患者に良き治療サービスを提供する姿勢が基本に据えられなければならない。

 今後とも、分子標的薬や抗体薬などの多くの新薬の市場化が見込まれるが、そのためには臨床試験の質がさらに向上すると同時に、効率的にならなければならない。臨床試験のための資金に関しては、臨床試験への政府資金援助が減少する傾向の中で、公定資金以外の民間資金を導入することが課題だ。

 高額な抗癌剤が社会に受け入れられるには、抗癌剤や臨床腫瘍学の重要性が一般に認知され、受容されるような社会的活動が必要だ。社会的理解を得る前提として、情報開示や情報管理などの倫理面に関して自ら高いハードルを課すべきだと考えている。同時に、臨床試験の停滞などをもたらさないように、常に倫理規定の妥当性を見直すことも必要だ。

 私たちには、William Osler医師(1849-1919)が述べている、「患者と連携し、患者への関与を高める」姿勢が基本として求められるている。医師として技能向上のために研さんを積み、専門職業意識と患者第一意識を高めることが、ASCOのさらなる発展に欠かせない。

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