2005.04.13

<高齢化に関する論説> 腰痛防止の国民運動−歩く姿を美しく

 「長寿社会」の新しいネットワーク作りを考える「方円の器」を主催する江上尚志氏の「高齢化に関する論説」から、「腰痛防止の国民運動−歩く姿を美しく」を紹介します。(三和護、医療局編集委員)

■■□ 高齢化に関する論説
■■□ 腰痛防止の国民運動−歩く姿を美しく   江上尚志氏

 病院でのできごとから話そう。ある日、入院中の伯母の見舞いに行った。ちょうど看護師二人が車いすに伯母を移乗させようとするところだ。

 最初に少しずつ身体の向きを変えさせて行く。痛かったり不安だったりすると伯母の表情がすぐ変る。実は伯母は88歳の高齢だが転倒する前はすこぶる元気だった。ところが何かに躓いて(つまづいて)転んだことで脳梗塞を起こしてしまったという。CTスキャンの結果、左半身は麻痺してしまったようだ。「闘病」は伯母のためにある言葉だと言い聞かせている。

 「左足のつま先が曲がっている」とウオーキング仲間から指摘されて気づいたのだが、どうも自然に足先が左方向に曲がって歩いているらしい。べつだん力を左側にかけているわけでもない。ところが重心を左にかけるときに爪先が左側に流れるように歩いているということだ。肺気腫のためウオーキングを始めて2年が経過し、ようやく歩くことが自然になりかけた時期なのでかなりショックだった。胃が痛ければ痛む側を庇いながら歩くのが自然である。そうすると内臓が弱っているのだろうかと疑問に思ったりした。

 どうも日本人の姿勢に問題がありそうである。理学療法士の先生に伺った話だが、腰痛のためにせっかく資格を取っても脱落するヘルパーが多いという。無理に患者(最近では「ご利用者」というらしい)の体位を交換したり無防備に車椅子に移乗させたりする結果、いわゆるギックリ腰になってしまうらしい。これでは“国民的損失”であるばかりか今後の在宅高齢者対応が困難だということになってしまう。自分でできないばかりか、他人の手を煩わせながら相手の高齢化を早めてしまうことになるからである。

 そこで「転ばぬ前(さき)の杖」を求め専門家に歩く姿のことを尋ねてみることにした。日本人の腰が弱くなったのは坐らない習慣が遠因であることは分かってきた。昔は(1)雑巾がけ、(2)布団の上げ下ろし、そして(3)田の草とりで腰が十分に鍛えられていた。ところが、戦後日本では、(1)廊下や板の間がないために雑巾をかけたくてもかけられない。(2)布団が嫌われベッドの生活の人が多くなった。そして、(3)田んぼが周囲から消えてしまった上にマンションでは草むしりなどする庭もない。

 単に「腰痛防止の国民運動」を起そうと言っても賛同者が得られなくては意味がない。お年寄りの介護をするために必要だと大声を出そうものならかえって反感を招くだけかもしれない。ところが、テレビからは「美しく痩せる」とか「ダイエット」というコマーシャルが一日中流れている。そこで、「歩く姿を美しくしよう」という運動に切り替えることにしたらどうだろう。水汲みに行った少女が甕を頭の上に載せて歩く姿が美しいと思ったことがある。バランスをとりながら結果的に美しく歩いているようだ。

 ウオーキングであっても「準備体操」と「軽快な服装」、「快適な靴」が不可欠らしい。他人から見て美しい姿で歩くことができれば、何歳になってもこんな素敵なことはない。お相撲の四股を踏む姿勢、手首や足首を柔軟にする、呼吸を整えてムリをしないで歩いていく。自分の姿を鏡に映してみることだが、他所のガラス戸に映っている自分を見るだけでもかなり意識して歩くことができる。いつも「美しく歩くこと」を考えながら、疲れたら休憩することも肝要らしい。

*方円の器はこちらです。
http://www11.ocn.ne.jp/~uten/index.html

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