2005.04.11

【編集委員の視点】 小さな小さなNGOが、新薬開発に乗り出した

 4月1日、山之内製薬と藤沢薬品が合併し、アステラス製薬が誕生した。今後も、大日本製薬と住友製薬、三共と第一製薬など、大手製薬企業の合併・統合が続く。

 こうした合併の背景の一つに、医薬品の研究開発費が年々上昇していることが挙げられる。数百億円にも上る研究開発費をかけた新薬を次々と市場に投入し、他社との厳しい競争に勝ち残るために、企業は大型化して、体力を蓄えておかなければならないのだ。この傾向は、欧米の製薬企業ではいっそう顕著で、メガ・ファーマ化が進んでいる。

 大型化する一方の製薬企業で研究開発のターゲットとなるのは、患者数が多く、大きな市場が見込める領域だ。患者数が少ない病気や、患者数は多くても発展途上国が中心の病気は、開発費を回収するのが困難という理由で、治療薬の開発が後回しにされる傾向がある。

 このような病気のことを、ネグレクテッド・ディジーズ(neglected disease)と呼ぶ。病気の存在自体は知られているのに、有効な治療薬の開発がなされないまま放置されている病気という意味だ。例えば、ハエの一種が媒介する感染症のひとつであるリーシュマニア症は、アフリカ、中近東、南米など88カ国に約1200万人の患者がいるが、毒性が高い薬や、高価すぎて発展途上国のほとんどの人々には手が出ないような薬しかない。

 このような状況を打開しようと、2003年にDNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative)という非政府組織(NGO)がスイスに誕生した。現在、リーシュマニア症、ヒトアフリカトリパノソーマ症(いわゆる“眠り病”)、シャーガス病の3つに対して、新薬の開発に着手している。

 DNDiは研究所も工場も持たない。その代わりに、世界中の研究者に協力を求めて、薬に適した物質を見つけたり、有効性を検証してもらったりする。そして、病気が流行している国の研究者と協力して臨床試験を行う。できた薬は、製薬企業と交渉して製造コストぎりぎりで生産してもらう。

 日本でDNDiの活動に取り組んでいるのは、医師であり製薬企業で医薬品開発に携わってきたクリス・ブリュンガーさんと、薬剤師として国境なき医師団で仕事をした経験のある平林史子さん。この夏には日本のある研究所との間で、共同研究のプロジェクトを立ち上げるところまでこぎつけたそうだ。

 メガ・ファーマの台頭の影で、こんなNGOもある。(文)

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