2005.04.07

被告席の医師は何を思うのか その3 「裁判を続けてよかった。私にミスはなかったことが認められたのだから」

 「被告席の医師は何を思うのか」のその3です。

■私の主張を「うそでたらめ」と言われた■

 W.D氏は2人の弁護士を代理人に迎え裁判に臨んだ。

 「裁判の日には、ほとんど足を運びました。弁護士さんが裁判官の心証という面があるから出た方がいいと言ってくれたからです。そうしないと、相手方の訴状だけで判断すると、私がどれほどかひどい極悪人かという印象を受けるとも言われた。いいかげんなやつだとか思われてしまう。それが、やっぱり直接顔を見ると、ああこいつはこんな人間なのか、というのが分かるはずです」。

 ただ、裁判が15年と長期に渡ったため、裁判官が何人替わったか分からないほどだったという。「心証のことは書き送りしないだろうから、残念ですよね」。

 訴状に対しては、とても腹に据えかねたというW.D氏。「準備書面でも、私の主張はうそである、とか、でたらめであるとかしか書いていない。これが私はものすごく腹に据えかねました。だからこちらが準備書面を作るときは、とても疲れるのです。本当に腹が立つから」。 

 「私は法廷で一番最初に宣誓しているわけですよ。うそ偽りは申しませんと。だから、私は法廷でうそ偽りは言っていない。それを相手方はうそである、でたらめであるといってくる。私は何度弁護士さんにお願いしたか分かりません。私をうそつき呼ばわりするのは無礼だ、法廷侮辱じゃないかと言わせてほしいと」。

■やっぱり長かった15年■

 第1審の裁判は、原告側からの準備書面の提出が遅れがちだったこともあり、判決まで10年も費やしている。そして1983年の判決は、被害者救済の色合いが濃いものとなった。つまり、W.D氏は、300万円余の損害賠償を支払いよう命じられたのだった。

 「原告側は2000万円請求しているのに、私に300万円払えという。ああこれはもう私の主張は大体認めたんだなあと思いました。だけれども、被害者救済という意味で私に300万円払えという意味だなと理解したわけです。しかし、これが承知できるかというと問題は別です。事実認定は、ほぼすべてこちらの主張どおりに認めておいて、判断だけが異なるというのはそんなばかな判決があるか、ということですから」。

 結局、W.D氏は、第1審判決を不服とし、控訴した。そしてさらに4年後の1987年3月、控訴審は「子癇ショックで死亡した事件を出血死と認定した原審を破棄し、W.D氏には何ら過失はないとする判決を下したのだった。

 W.D氏は最後にこう言っていた。「15年間戦ってきたわけですが、私は裁判を続けてよかったと思っています。私にミスはなかったことが高裁で認められたわけですから。・・・でも15年という年月はやはり長かったですね」。

(三和護、医療局編集委員)

■ 参考図書 ■
・医療機関のための個人情報保護対応マニュアル(詳しくはこちら
・50の医療事故・判例の教訓(詳しくはこちら

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