2005.03.24

【編集委員の視点】 「患者主体の医療」をお題目で終わらせないために

 「患者主体の医療」「患者中心の医療」というフレーズをよく聞く。その表れか、病院の倫理委員会や政府の審議会に、患者の立場を代弁する人が委員として参加する機会が増えている。

 しかし現実には、患者代表の委員が、言葉は悪いが“お飾り”的な存在になってしまっているケースもあるようだ。実際、専門用語が飛び交う中で、ふだんは「先生」と呼んでいる専門家を相手に意見を述べよと言われても、気後れしたり、ときには議論についていけなかったりすることもあるだろう。

 そこで参考となるのが英国の例だ。診療ガイドラインに関する厚生労働省の研究班の一員として、1月に英国を訪問した佐藤(佐久間)りかさんの話を聞いてそう思った。

 英国では2001年に、国立臨床卓越性研究所(National Institute of Clinical Excellence; NICE)の一部門として患者参加ユニット(Patient Involvement Unit:PIU)ができた。NICEはさまざまな疾患の診療ガイドラインを作っているのだが、作成グループには患者の立場を代弁する人を2人含めることになっている。1人でなく2人というのがポイントだ。PIUは、患者代表が力を発揮できるようサポートする役割を果たす。

 具体的には、患者代表向けのワークショップを開いて、診療ガイドラインについて説明したり、臨床研究を患者の視点で吟味する練習をしたりする。作成グループの中で患者代表が発言しにくい雰囲気があれば、座長を交えて話し合いの場を持ち、改善を促す。PIUのこうした活動があって、患者がほんとうに知りたい疑問を引き出すことができ、診療ガイドラインがより実のあるものになるというのが、NICEの考え方だ。

 さらに、作成段階から患者代表に参加してもらうことで、実際にできあがった診療ガイドラインを患者向けに平易な言葉で書き直したり、その普及に一役買ってもらったりと、一石二鳥(いやそれ以上?)の成果を上げているそうだ。

 患者であっても、いやむしろ患者であるからこそ言えることがある。その貴重な経験を生かさない限り、「患者主体の医療」は単なるお題目に終わりかねない。(アールグレイ)

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