2005.03.24

障害に関する論説 □ 待つ心−障害のある人からのメッセージ

 「長寿社会」の新しいネットワーク作りを考える「方円の器」の主宰者、江上尚志氏は、「障害に関する論説 待つ心−障害のある人からのメッセージ」と題する論説を記しています。以下に紹介します。
 
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障害に関する論説
待つ心−障害のある人からのメッセージ    江上尚志 氏

 日経BP社の「看護・介護スペシャル」に「障害のある人からのメッセージが届く」(平成17年3月17日)と題する内閣府(障害者施策担当)のまとめが届けられた。“外見では分からないために理解されずに苦しんでいる障害もある。本人や家族だけでは解決できないことが多い。”、“障害のある人に「周囲の人々に、特に知ってほしいと思っていること」を選んでもらったもの”だという。当事者の声を代弁するメッセージとして重く受け止めたい。

 障害の内容で、特に知ってほしいと思っている事項で注目されるのは、“外見で分かるものだけが障害ではなく、外見では分からないため苦しんでいる障害もある”(84.7%)である。最近ようやく「オストメイト」のための公衆トイレが設置されるなどの動きが出てきたが、中途障害者を含めて健常の人を理解させる難しさを痛感する。

(注)「オストメイト」は直腸がん、膀胱がんなどにより臓器に機能障害を負い、腹部に人工的に排泄のための孔を造設した人のこと(JR大船駅西口に本年3月31日開設)。

 続いて、“障害の種類も程度も様々で、一律ではない”(80.6%)“障害は誰にでも起こり得る身近なもの”と続いているが、同順位の“障害があっても普通の生活をしたいと願っている”(72.5%)、“障害が重度でも生き甲斐や役割を持つことで生きいき生活できる”(66.7%)の2項目から “障害のある人の前向きな姿勢がうかがえる”(日経BP三和護編集委員)と読み取っている。実は“障害があっても普通の生活をしたいと願っている”というとき「普通の生活」という表現が曲者である。

 「普通の生活」とはいったいどんな内容を指しているのだろう。他人と同じでいたいという反面、人とは違う自分でいたいとも思う。いずれも健常者が考える世界と変わらないと言えるだろう。ところが適応力や理解力などで健常者とは差があり、「急がない・急がせない」という配慮が不可欠になる。周囲の配慮が欠如すると「パニック」現象に陥る人も多いため「高齢者≒障害者・児」と表現することもある。高齢者(認知障害)と障害者が違うのは障害者が一律ではないからである。

 障害を持つ者にとって「転ぶ恐怖」と「一歩踏み出す喜び」とは紙一重である。だから歩行というものの重要性が認識されるものでもある。はきなれた靴が歩行にとって重要なことは誰でも分かると思われるが、実際には障害者のための「シューフィッティング」や左右別の靴を提供する事業者(「あゆみシューズ」徳武産業)などと出会える人は稀である。そのため歩行に難儀を感じる人の場合には意識付けばかりでなく、足を暖める、さするといった肉体的な労いも不可欠のことであろう。

 さらに、障害者にとっては「相手が受け止めてくれるか」という問題も共通のテーマである。概して障害のある人たちは「ゆっくり考える」特性がある。認知障害のお年よりが幼少の頃の自宅へ帰ろうとする状況を「徘徊」と呼んで本人の選択を狭めようとしていることも問題視されてきている。気持ちの向く先を変えて差し上げるだけで大きく変化することもあるという。障害者に接する心で大切なのは「待つ心」ではないだろうか。「待つ」ことができるかどうかでメッセージが聞こえるか否かの分かれ道になりそうだ。

*方円の器のホームページは以下です。
http://www11.ocn.ne.jp/~uten/index.html

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