2005.03.24

【エイズを見直す】 多剤耐性で病気の進行が早いHIV-1の出現、日本でも起こりうる?

 ニューヨーク市で、強い薬剤耐性を示すHIV-1に感染し、感染から最短で4カ月、最長でも20カ月以内にエイズを発症した症例が確認された(関連トピックス)。患者は40代後半のホモセクシャルの男性で、健康状態が悪くなるまで複数のパートナーと無防備な肛門性交を続け、さらに覚醒剤の代表の一つであるメタンフェタミンを使用していたことから、感染拡大が懸念されている。このニュースを読んで真っ先に思ったのは、日本でも新型HIVが出現する可能性はないのだろうか、ということだった。

 新型HIVが多剤耐性を獲得した経緯、あるいは感染から発症までの時間が早い理由は、まだ明らかになっていない。新型HIVの解明は、今後の研究成果を待ちたいが、ここでは、今回確認された患者が感染が分かるまでの間、多数のパートナーと無防備な性行為を繰り返していた点に着目したい。

 日本で、性行為が感染経路とみられるHIV・エイズの報告例は、年々増加している。たとえばHIV感染では、特に、同性間性的接触が増加を続けている。1999年に新規件数が201件と初めて200件台に突入、わずか2年後の2001年には314件と300件台を記録した。2003年の新規件数は356件と急増している。そしてそのほとんどが男性なのだ。

 つまり、日本では、男性の同性間性的接触者(MSM)は、HIV感染のハイリスクの人々と考えられるわけで、彼らへの支援が急務になっているのだ。新型HIVが出現する環境としては、日本も、ニューヨークも変わらないに違いない。

 ではどうやって、男性の同性間性的接触者へアプローチすべきなのだろうか。

 昨年の日本エイズ学会での発表を紹介したい。京都大学の日高庸晴氏らのグループが取り組んでいる男性の同性間性的接触者(MSM)への支援策を探る研究で、学会が優秀と認めた発表の一つだ。

 研究グループは、インターネットを利用してMSMの人々に協力を呼びかけ、彼らの性的活動の実態やHIV感染の予防行動などを明らかにしている。

 MSMの人々がよく利用するホームページを介して無記名式自記式質問票調査を実施、2003年2月28日から5月16日までに、2062人から有効回答を得た。背景としては、平均年齢は29.0歳(14〜76歳)、また職業は社会人が42.3%、学生が39.4%などだった。

 そこから明らかになったのは3点。

 まず若年層、特に10代で、コンドームの使用率が低かったこと。質問では肛門性交の経験者にコンドームの使用状況を尋ねたが、常用していると回答したのは、10代が19.8%で最も少なかった。20代は33.3%、30代は39.9%、40代以上は33.9%だった。

 2点目は、心理カウンセリングのニーズが全体の62.1%と高いのに対し、カウセリングをしてくれる医療機関の心当たりがあると回答した人が17.4%と低かったこと。調査では、若年層ほど、不安や抑うつなどメンタルヘルスの悪化がみられており、研究者らは「彼らを支援できる医療機関について情報提供するなどの対策が必要」と訴えている。

 3点目は、コンドームを使用しない理由に、セックス相手への希求感があること。コンドームの非常用群の方が常用群より、「病気の予防も大切だがそれ以上に相手とのつながりの方が大事」「セックスしてくれるならコンドームを使わないでもいいと思う」などと考える人が多かった。希求感と予防のバランスを理解した上での支援が必要になっている。

 日高氏らのグループのように、相手を理解した上での支援という男性同性間性的接触者(MSM)へのアプローチが広がっていって欲しいと切に願う。(三和護、医療局編集委員)

■ 関連トピックス ■
◆2005.3.9 エイズを見直す】 HIV感染が増える背景に潜む、リスクの高い無防備な性行動
◆2005.2.2 エイズを見直す】「年間新規報告数が1000件を超える」の衝撃度
◆2005.1.14 エイズを見直す】日本の小児HIV感染者・AIDS患者にも、直面する緊急課題がある

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