2005.03.21

【日本循環器学会2005速報】 循環器疾患の予防には、糖尿病、高血糖への対策が急務−−NIPPON DATA90の成果

 日本人を対象にした循環器疾患基礎調査の追跡調査(NIPPON DATA90)で、糖尿病群では全死亡だけでなく循環器疾患による死亡リスクも上昇することが分かった。また、HbA1cが5.5%以上の群では、HbA1cが4.9%以下の群に比べて循環器疾患による死亡が高くなることも判明した。3月21日のシンポジウム「循環器疾患の成因としての糖尿病 / 耐糖能異常」の中で、 札幌医科大学の斉藤重幸氏(写真)が報告した。

 NIPPON DATA90(注)は、1990年の循環器疾患基礎調査を基に、その後の10年間を追跡調査したもの。循環器疾患基礎調査は、厚生労働省が実施しているもので、無作為抽出した日本人の一般住民を対象に、循環器疾患と危険因子の動向を把握するため、10年ごとに行われている。

 NIPPON DATA90の対象は、1990年11月に実施された第4次循環器疾患基礎調査の対象者のうち、2000年11月15日までの10年間に生死あるいは死因の追跡を行った8385人(追跡率は97.8%)。今回の分析では、30歳以上の男性3459人(53±14歳)と女性4880人(53±14歳)を対象とした。

 解析に当たっては糖尿病治療歴がある人、あるいは随時血糖値200mg/dL以上か、またはHbA1c6.5%以上を糖尿病と定義した。

 解析対象は、糖尿病の有無とHbA1c値の5群間で生命予後と心血管疾患死亡予後が比較された。10年間の追跡の結果、非糖尿病群の死亡率は8.7%(死亡数614人)だったのに対し、糖尿病群では死亡率が21.3%(103人)と有意に高かった(p<0.001)。

 また、循環器疾患死亡に影響を与える因子を浮き彫りにするため、Cox比例ハザードモデルで解析したところ、糖尿病があることが有力な危険因子のひとつだった(修正標準化偏回帰係数β=1.728、95%信頼区間1.192-2.505)。

 解析では、HbA1c値で、4.9%以下群、5.0〜5.4%群、5.5〜5.9%群、6.0〜6.4%群、6.5%以上群の5つのグループに分け、さらに比較検討している。それぞれのn数は、4828人、2118人、420人、124人、232人。

 その結果、累積生存率をみると、HbA1c値が高いグループほど10年後の生存率が低いことが分かった。循環器疾患死亡を従属変数としたCoxハザードモデルによる解析では、HbA1c4.9%以下を基準とした場合、5.0〜5.4%群がハザード比1.322(95%信頼区間0.976-1.70)、5.5〜5.9%群が2.037(1.295-3.205)、6.0〜6.4%群が1.410(0.613-3.519)、6.5%以上群が1.971(1.105-3.519)だった。

 これらの結果から斉藤氏は、「循環器疾患の予防には、糖尿病、高血糖への対策が急務であることが明らかになった」と結論付けた。(三和護、医療局編集委員)

(注)National Integrated Project for Prospective Observation of Non-communicable Disease And its Trends in the Agedの略。1.解析対象が日本人の代表的なサンプルである、2.標準化された問診と検体測定が行われている、3.住民票と死亡診断書をベースにした高い追跡率である−−などの特徴がある。


Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. “根室の奇跡” 耐性肺炎球菌を減らせた秘策 事例研究◎抗菌薬を適切に使えば必ず地域社会を変えられる FBシェア数:177
  2. 59歳女性。めまい 日経メディクイズ●心電図 FBシェア数:0
  3. 医者だとバレたくない うさコメント! FBシェア数:10
  4. レーシックの欠点補う近視矯正手術SMILE リポート◎第三の視力矯正手術の実力は? FBシェア数:145
  5. 保険者の突合点検で発覚した検査料の誤請求 あのレセプトが削られたわけ FBシェア数:34
  6. 塩野義製薬の新規抗インフルエンザ薬、第3相臨床試… インフルエンザ診療Next:トピックス FBシェア数:250
  7. 俺はいたって元気なんだけどなあ〜 医師の知らない?検査の話 FBシェア数:27
  8. 83歳男性。両下肢の脱力 日経メディクイズ●救急 FBシェア数:0
  9. 抗菌薬使用最適化にクリニカルパス見直しが効く 事例研究◎院内で活躍する感染制御部 FBシェア数:94
  10. 皮膚膿瘍は切開排膿後の抗菌薬で治癒率上昇 NEJM誌から FBシェア数:2