2005.03.11

高齢化に関する論説■座席を譲る時間帯−シルバーシートについて考える 

 「長寿社会」の新しいネットワーク作りを考える「方円の器」の主宰者、江上尚志氏は、「高齢化に関する論説 座席を譲る時間帯−シルバーシートについて考える」と題する論説を記しています。以下に紹介します。
 
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座席を譲る時間帯 
−シルバーシートについて考える     江上尚志 氏

 身体が疲れてくると電車やバスに坐りたいと思う。整列乗車の考え方が進んできたからだろうか我さきに乗り込む人は減ったようだが、まだまだ人を労わるような状況ではない人が多い。そのためなのだろうか、障害者や妊産婦を中心に「優先席」という表現の座席が増えてきた。都会と郊外では事情が違うかもしれないが、通勤に2時間もかけている人たちの場合は坐ることができた日とそうでない日とでは体力の消耗に大きすぎる差がある。始発駅まで戻って坐ってくるという通勤者が大勢いるのも事実である。

 高齢者を明確に65歳以上としたのは「介護保険法」あたりからであるが、“今年60のお爺さん”(童謡「船頭さん」竹内俊子)と呼ばれていた時代はほんの少し前のことである。日本の高齢化のスピードが速すぎることと、少子化の波がおさまらないことから高齢者の定義を見直そうという動きすらある。内閣府政策統括官(共生社会政策担当)では、“年齢だけで高齢者を別扱いする制度・慣行等の見直し”を始めている(内閣府ホームページ。下線は筆者)。確かに大切なことではあるが、見え透いた魂胆が見え隠れする。

 社会全体が高齢者をどう捉えるかは確かに重要な視点である。しかし、「高齢者についての画一的な見方を改めるという国民の意識改革、雇用における年齢制限など高齢者の社会参加を妨げているもの、また逆に、高齢者だからといって一律に優遇する制度等の必要性」について検討を開始したようだ。釈然としないのは筆者だけではないのではないだろうか。高齢化が進んだのが偶然であるという前提で政策を展開させようとしているようだ。働きづめに働いてきた人がようやく辿り着いた場所に坐るなと言っているように見える。

 「シルバーシート」(JR東日本では昭和48年、営団地下鉄は昭和50年)という名称がいつのまにやら「優先席」(JR東日本では平成9年、東京メトロでは平成11年、東急電鉄は平成14年)(いずれも各社のホームページより)に変っている。つまり、高齢者を年齢で区別することが難しくなり、しかも社会全体における高齢者の位置づけが変り始めた頃に名称も変ったということのようだ。しかも少子化で“幼児を坐らせるな”と言えば叱られそうなご時世である。

 「優先席」・「シルバーシート」の二つをキーワードにしてインターネットで検索してみて驚いた。“優先席はいらない”とか、“必要悪”といった敵対的な文章が多数出てくる。もはや“お年寄りを大切にしよう”といった次元では若い人たちの理解を得られないということなのではないだろうか。そもそも「高齢者」そのものが保護すべき対象なのかどうかが曖昧なままなのではないだろうか。鉄道会社が親切ごかしで満員列車を運行し続けることを正当化するための「シルバーシート」だったのではないだろうか。

 高齢者を年齢で決めるなという発想は正しいかもしれない。その意味で「『世代間の連帯強化』に関しては、社会保障制度における負担と給付等についての国民の意識を把握し、研究」としている(同ホームページ)ことは時宜を得ている。今の日本では交差点で目の不自由な人が困っているのを見かければ自然に声を掛ける若者が増えている。さらには、そうした若者は車いすの人の介助も積極的に取り組む。一方で車いすが自由に往来できる道や駅舎にするための運動も不可欠であることを考えるべき時期が来ている。

*方円の器のホームページは以下です。http://www11.ocn.ne.jp/~uten/index.html

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