2005.02.25

■■ 食品安全に関する論説 ■■ 食品の安全と高齢者

 「長寿社会」の新しいネットワーク作りを考える「方円の器」の主宰者、江上尚志氏は、「食品の安全と高齢者」と題する論説を記しています。以下に紹介いたします。

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 ノロウィルスという文字が頻繁に新聞紙上に登場するようになった。"Norwalk-like viruses”ノーウォーク様ウイルスという暫定的な属名で呼ばれてきたが2002年の夏、国際ウイルス命名委員会から「ノロウイルス」という正式名称が決定され世界で用いられるようになったという。中国地方の高齢者施設で多数の罹災者を報告しなかったことが明るみに出て問題になった。順を追って報道を見ていくと、弱者を中心に発症し伝染性があるようだ。残念なことには当該施設で死者が出たほか小学校などにも被害が広まっている。

 神奈川県(鎌倉保健福祉事務所)が出している1枚ものパンフレット「ノロウィルスを知っていますか?」によると、“冬場になると保育園や学校、老人ホーム等で多発する感染性胃腸炎。(中略)以前は原因が分からず、「いわゆる冬場のお腹に来る風邪」とされていましたが、この胃腸炎の多くはノロウィルスによるものだということが分かってきたのです。”とある。以前は小型球形ウィルス(SRSV)と呼ばれていたものだそうだ。つまり前から分かっていたが十分な対策が取られてこなかったということのようだ。

 感染経路を上記パンフレットで見ると、“主に経口感染ですが、飛沫による感染も推定されます。同じウィルスが原因であっても、感染経路の違いから(1)(2)の場合は食中毒、(3)は感染症の扱いになります。”と行政上必要な区別を記しているようだが、(1)汚染されたカキ等の二枚貝を生あるいは十分に加熱しないで食べた場合、(2)食品取扱者(調理をする人や食事の介助をする人)がノロウィルスに感染しており、その人の手指等を介して汚染された食品を食べた場合、(3)患者の便や吐物からの二次感染と恐ろしいことが書いてある。

 高齢者施設での衛生管理に問題があると言わんばかりの書かれ方である。平成16年2月19日の全国高齢者保健福祉・介護保険担当課長会議資料には次のように書かれている。“昨年末、多数の高齢者が利用する施設等についても、衛生管理及び感染症対策に係る規定を整備するため、「養護老人ホームの設備及び運営に関する基準の一部を改正する省令」を公布・施行し、(中略)「有料老人ホームにおける衛生管理等について」を発出したところである。”とあり、一年前のことだとは思えない書かれ方である。

 このことだけでも詳細は省くとしても高齢者施設で毎年のように杜撰な衛生管理が問題になっていることがわかる。利益至上主義に走った有料老人ホームで食中毒などが発生した場合には指定取消処分などが待っているのかもしれない。上記パンフレットは“患者の便や吐物には大量のウィルスが含まれています。(便1g当たり100万個程度)集団生活の場では、患者の便や吐物の処理をした人が、その際手指等に付着したウィルスによって感染する(後略)”と絶対に起こしてはならないことを無目的に書いているようだ。

 ポイントは、すぐに拭き取る、乾燥させない、消毒、手洗い、と実に簡単なことだそうだ。高齢者の介護を目的とする施設がこんなことすら守ることができない人を採用しているわけではないだろう。どこかに人の弱さに付け込む心の隙があるとしか思えない。このくらいは、今日ぐらいはという安易な取り組み姿勢そのものが問われている。高齢者のお世話をする職場では自分たちはもちろん、訪問する人たちに衛生意識を徹底的に求めるくらいの気概を持って欲しいものだ。

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