2005.01.30

BSEの経口感染リスクから見て欧州における感染予防措置は有効

 フランス原子力エネルギー庁のCorinne Ida Lasmezas氏らは、アカゲザルを使った感染実験と、過去に行われた一連の研究の結果を総合して、欧州で実施されているBSE対策は有効であると結論付けた。詳細はLancet誌電子版に1月27日に報告された。

 過去にBSEの病原体に暴露された可能性のある人の数は明らかではない。経口感染効率も、ウシ-ヒトの種間バリアの強度も確定されていないことが、人々の不安を大きくしている。

 そこでLasmezas氏らは、アカゲザルを使ってBSEの経口感染リスクを調べた。2頭のサルにBSE感染ウシの脳のホモジェネート5gを経口投与したところ、60カ月後に1頭が新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(variant Creutzfeldt-Jakob Disease:vCJD)様神経疾患を発症した。脳には典型的な病変が見られ、扁桃、脾臓、腸に異常プリオンの蓄積があった。もう1頭は76カ月の時点でも健康だった。

 同じ研究グループは先に、vCJD様疾患の末期にあったアカゲザルの脳のホモジェネート5gを2頭のアカゲザルに経口投与する実験を行った。2頭はそれぞれ44カ月後と47カ月後に発症した。新たな結果と比較すると、種間バリアが潜伏期間を有意に伸ばしたと考えられる。BSE感染によるvCJDの平均潜伏期は10-15年と見られているが、食人習慣に伴うヒト・プリオン病のクールーの場合、潜伏期間は最高40年であることを考慮すると、種間バリアが存在するvCJDでは、感染から50年を経て発症する可能性もある、と氏らは述べている。

 同氏らは、霊長類や家畜を対象に用量反応関係を調べた複数の研究結果を利用して、種間バリア強度を推測した。その結果、BSE感染ウシに由来する危険部位を同じ量食べたとした場合、アカゲザルが感染する可能性は、ウシが感染する可能性の7-20分の1であると推算された。また、危険部位の除去によりヒトがBSEの病原体に暴露される可能性は90%減少すると推算された。欧州では、30カ月齢を越えるウシについては全頭検査が行われており、英国では30カ月齢を越えるウシの食用が禁止されてきたことは、リスクをさらに低くしている。

 では、現行のスクリーニング検査は有効だろうか。EUで使用されている検査を用いて行われた実験のデータを基にすると、検査結果が陽性にならない限界量の異常プリオンを含む未発症ウシの危険部位を食べると想定した場合、アカゲザルが経口感染した5gと同じ量の病原体に経口暴露するためには1.5kgが必要という計算になるという。

 現在、危険部位は除去されているため、スクリーニングをくぐり抜けた感染ウシが流通しても、感染のおそれは極めて少ないことになる。従って、欧州における予防措置は有効と、筆者達は結論付けている。

 日本の対策も、欧州と同等もしくはそれ以上といえる。が、一方で米国の対応からは今後も目が離せない。

 原題は「Risk of oral infection with bovine spongiform encephalopathy
agent in primates」、概要はこちらで閲覧できる(Lancet誌のサイトへの登録が必要です)。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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