2004.12.22

小さな子供の家庭内での事故を防ぐには、RCTの結果から

 プライマリ・ケア医は、家庭内での不慮の事故による子供のけがを防ぐために何ができるだろうか。子供の安全を守るためのアドバイスと器具の提供の効果を評価する無作為割付比較対照試験が、英国Nottinghamで、5歳未満の子供を持つ3428家族を対象に行われた。詳細は、British Medical Journal誌電子版に12月16日に報告された。

 不慮の事故は英国でも子供の主な死亡原因になっている。5歳未満の子供は家庭内で事故に遭うことが多く、特に社会経済的な地位が低い家庭の子供はそのリスクが高い。プライマリ・ケア医は、不慮の事故の予防に貢献できる立場にあるが、具体的な方法は確立されていない。

 今回、英国の貧しい地域を対象に、安全器具の無料提供も含む安全指導の効果を調べる試験が行われた。指導群に割り付けられた家庭については、巡回保健師が訪問時に各家庭で、または検診目的で家族がプライマリ・ケア施設を訪れた際に、標準化された約20分間の相談と指導が行われた。低所得家庭には巡回保健婦が、階段用フェンス、暖房器具用ガードフェンス、火災報知器、キャビネット・ロック、窓用ロックを無料で配布、取り付けた。低所得でない場合には適正価格で販売された。

 調査の結果、2年の追跡期間内における医療を必要とするけがの頻度、セカンダリ・ケア施設を訪れる頻度、入院の頻度には、有意な差はなかった。が、指導群は対照群に比べ、けがでプライマリ・ケア施設を訪れる頻度が有意に高かった(オッズ比1.70)。また追跡期間中に一連の安全策をとっていた家庭の割合は、指導群で有意に高かった。

 指導は安全対策に有意な改善をもたらしたが、診察が必要なけがの頻度は減らなかった。原因の一つは、調査前から安全器具を使用し、かつ安全策を実施していた家庭が多かったことにある。割付段階で個々の安全器具を使用していた家庭の割合は45〜75%、子供にとって危険な製品(薬品や洗剤など)や道具(刃物など)の保管場所に気を付けている家庭も35〜90%弱と多かった。

 指導の事故防止効果が明白にならなかったことは残念だが、英国では比較的貧しい家庭でもこれだけの安全策を講じている点は、われわれも見習う必要がある。そのためには、日本の臨床医や保健師も、子供の発達や病気、栄養の相談に加えて、事故防止の指導に力を入れていくことが大切だろう。

 原題は「Providing child safety equipment to prevent injuries: randomised controlled trial」、全文がこちら(PDFファイル)で閲覧できる。 (大西淳子、医学ジャーナリスト)

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