2004.12.13

「条件付きトクホ」が意味するものは・・・

 私はかつて厚労相からの報告書「『健康食品』に係わる今後の制度のあり方について」に対し、その科学的根拠の判定のあいまいさについて指摘した。今回、この報告書の内容を制度化するにあたり、厚労相は具体案をまとめた。しかし、その内容は私の不信感をさらに増幅させるものであった。

 その具体案では、現行の特定保健用食品(トクホ)の審査で要求している有効性の科学的根拠のレベルには届かないものの、一定の有効性が確認される食品を条件付きで特定保健用食品として許可するとし、以下の審査基準を設けるという。



 つまりトクホの審査においてRCTの有意水準を甘くし、しかも非無作為化比較試験の結果をも採用しようというのである。さらには作用機序が不明であってもOKだというのだ。

 私の知る限り、有効性を判定する際、有意水準が5%〜10%であれば当該成分には効果がないと結論付けるのが通常の考え方である。基準を甘くしてしまえば、偶然の結果、差が出てしまったデータを過大評価することになりかねない。基準が甘ければ、少数のサンプル数で何度も実験を繰り返し、その中でより結果のよかった実験結果のみを公表するという方法がとられてしまう可能性もある(ここではサンプル数の既定はないのだ)。はたしてこのようなデータが科学的根拠になり得るのだろうか。ここまでして国が健康食品にお墨付きを与える意味はあるのだろうか。

 また、作用機序が不明確な商品に国がお墨付きを与えてしまうと、様々な問題が生じる。トクホ表示とともに、「病気で治療中の人は医師と相談する」由が小さく表示されている商品もある。相談された医師はその商品の作用機序から、疾病に対する影響、投与中の医薬品との相互作用を推測することになる。しかし、その作用機序が不明であれば、その商品の疾病に対する影響や肝機能や腎機能の低下した人にとって、これらが安全に利用できるかどうか医師が独自に推測することは困難となる。

 しかも、小児、妊婦、授乳婦などにとっても安全かどうかもわからない。ましてや医薬品との相互作用など全くお手上げだ。また、患者にもし何らかの健康障害が起こったときにその原因として摂取したトクホに問題があるかどうかを推測することもできなくなる。このようなあいまいな基準を想定するのであれば、「医師に相談すること」などの表記により医師に責任を押しつけるのではなく、上記のような人達には禁忌である由をはっきり警告表示すべきであろう。問題が起こってからでは遅いのである。

 今回の具体案では「条件付き特定保健用食品(仮称)」という名称を用いていることも問題だ。この「条件付き」という言葉だけでは消費者にとって何を意味するかは全くわからない。これは「根拠は必ずしも確立されていないが、△△に適していることが示唆されている食品」という意味を表しているらしい。しかし、上記の審査基準を見れば明らかなように、これは科学的根拠が希薄なために効果があるかどうかわからないトクホというべきものである。それを「条件付き」というあいまいな言葉で消費者をごまかすことは許されるべきではない。

 しかも、上記の表の条件付きの4類型ごとに分けないといっている。作用機序が不明でRCTにより有意水準が5%以下の場合と、非無作為化比較試験の場合とは全くエビデンスレベルが異なる。前者の場合は何らかの薬理学的効果があることが示唆されるわけであり、注意して利用すべきものである。後者は、もしかすると効果が期待できないことを示している。これらのどちらかを選択する意味は全く異なるのだから、同列に扱うべきではない。むしろ、それぞれの条件付き特保に2級〜5級の等級を付記することにより、エビデンスの優劣をはっきりさせるべきだ。それでこそ、エビデンスレベルに応じて消費者が商品を選択できるようになる。適切な判断ができるようエビデンスの意味の違いを消費者に理解してもらう材料とすること、それがせめてもの条件付きトクホの存在意義であろう。

 いずれにしろ、現行の案ではトクホのダブルスタンダードを作り出すばかりか、科学的根拠のあいまいさをオブラートに包み込み、消費者を惑わすだけの制度となるであろう。これでは「条件付き特定保健用食品(仮称)」制度の創設は健康食品業界を利することはあっても、国民の健康に資することはないと私は考える。

■ 参考文献 ■
1) 「『健康食品』に係る今後の制度のあり方について(提言)」の実施についての意見募集 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495040105

■ 参考図書 ■

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