2004.12.13

英国産婦人科医師会、ホルモン補充療法(HRT)は5年を限度にと提言

 日本では、更年期障害治療薬としてのHRTの普及率は1、2%に留まっている。が、米国では美容と老化防止を目的として広く使用されており、閉経後の女性の4割がHRTを一生継続するという。欧州各国でもHRTの普及率は2割を越えている。が、近年、副作用に関する報告が相次ぎ、HRTを採用している医師や患者の困惑も深刻になっていた。Lancet誌は、12月11日号の論説でこの問題を取り上げた。

 論説は、英国産婦人科医師会が発行した「Menopause and hormone replacement」と題されたハンドブックの内容を紹介している。医師会はプレスリリースにおいて「HRTは更年期障害の短期的軽減にのみ使用すべき」と主張し「安全限度は5年」を示唆した。

 医師会の主な狙いは、HRTの安全性に関わる混乱の原因となった複数の研究結果を客観的に批評すること、実際の診療のための見解を示し、今後の研究への助言を与えること、そして、混乱を招くセンセーショナルな報道に苦言を呈することにあった。

 さて、問題となった研究結果だが、ハンドブックは以下のように述べている。

 2003年8月の、HRTは乳ガン・リスクを2倍にするという発見については、このような観察研究は、たとえ非常に大規模であっても様々なバイアスの影響は否定できず、リスクを過大評価する可能性がある。次に、2002年7月、心疾患と骨折の予防を目的として閉経後の女性にエストロゲンとプロゲステロンを投与した臨床試験が、副作用が利益を上回るとして早期に中止されたが、実は、被験者の中に以前にHRTを受けていた人が多かった。

 また、今年2月にやはり副作用により早期中止された、子宮摘出術を受けた女性にエストロゲンのみを投与した試験も、無作為割付で行われたことに価値はあったが、被験者の年齢が更年期をかなりすぎており(平均63歳)、90%以上に更年期障害の自覚がなく、69%が肥満で、その他のリスク因子も抱えていたことから、この結果がそのまま、更年期障害に苦しみHRTの選択を考慮する女性に当てはまるとは言い難い。

 HRTの経歴は、現代においては象徴的だ。多くの人々に有用と期待される新薬が見つかる。観察研究から適用範囲拡大の可能性が示される。適用拡大が促進される。十分な追跡期間を設けた無作為割付の厳密な試験はほとんど行われない。使用が広まってから何年も経て、害やリスクが明らかになる。その後の観察研究が議論と混乱を引き起こす。その治療を採用していた医師と患者は途方に暮れる。

 こうした状況の慢性化を防ぐためには、今回のような、専門家による適切な分析と提言が不可欠だろう。

 原題は「HRT: what are women (and their doctors) to do?」、全文がこちら(PDFファイル)で閲覧できる(Lancet誌のサイトへの登録が必要です)。 (大西淳子、医学ジャーナリスト)

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