2004.12.10

11月生まれは多発性硬化症リスクが低い−−大規模研究から

 米英加の研究者らは、MSに関わる環境要因を調べる研究の中で、多発性硬化症(MS)患者には11月生まれは有意に少ないことを示した。詳細はBritish Medical Journal誌電子版に12月7日に掲載された。

 双生児、養子、異父兄弟などを対象とする古典的研究は、MSには遺伝的素因と環境要因の両方が関与することを示唆した。環境要因は、集団レベルのリスクに影響するだろう。例えば豪州では、温帯に含まれるTasmaniaの発症リスクは、亜熱帯のQueenslandの5倍だ。これは発症リスクと緯度との関係をうかがわせている。

 また、移住者対象の研究では、幼少期の居住場所とMSリスクの関係が示唆された。カナダでは、二卵性双生児のリスクは通常の兄弟の2倍との報告がある。これは、妊娠中や出生時の環境要因の関与をうかがわせる。が、成人期発症疾患と、胎児期や周産期、小児期の状況の関連を調べることは難しい。

 研究者らはまず、カナダで行われた、MSの遺伝的素因を調べるための集団ベースの長期研究のデータを基に、患者1万7874人について分析した。各月ごとに予想される患者数と実際の患者数の間に有意な差があったのは11月のみだった。11月生まれの患者は予測値より8.5%少なかった(P=0.0011)。英国の死亡証明書に基づくデータセットに登録されている患者1万1502人でも、やはり11月生まれの患者は予測値より10%少なく(P=0.009)、5月生まれの患者は16.3%多かった(P<0.0001)。デンマークとスウェーデンのデータを以上に加えて4万2045人分のデータとして分析した結果、5月生の患者は予測値より9.1%多く、11月生は8.5%少なかった。5月生まれと11月生まれのリスクの差は、対象となった国の中でMS罹患率が最も高いスコットランドで、最も顕著だった。

 著者らは、今回の研究は、標本サイズや再現性、対照群の選択等において過去の同様の研究に比べ信頼度が高く、強力な結果が得られたと考えている。が、その解釈は難しい。中枢神経系や免疫系の発達に季節的な影響が及ぶ可能性はある。緯度は、日照時間と、母体および小児の体内でのビタミンD合成量に影響するだろう。患者の出生年の紫外線の強さや気温、天気などを調べることにより、環境要因の特定が進む可能性はある。

 論文の表題は「Timing of birth and risk of multiple sclerosis:population
based study」、全文がこちら(PDFファイル)で閲覧できる。(大西淳子、医学ジャーナリスト)

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