2004.12.02

注目される大阪「カルテ改ざん裁判」、慰謝料請求に司法の判断は?

 いま大阪地方裁判所の第23民事部で、医療関係者が注目する裁判が進行している。訴えを起こしたのは、1992年に大阪大学歯学部附属病院で下顎腫瘍の手術を受けた男性。今年7月、「カルテの隠ぺい、改ざんにより精神的苦痛を負った」として同病院を運営する国立大学法人大阪大学に対して、慰謝料など1700万円を請求している。カルテ改ざん・隠ぺいだけを争点にした裁判は、初めてのケースと見られている。

 患者は1998年に、同病院の医療ミスを争点に訴訟を起こしており、その裁判で病院側にカルテの提出を求めたところ、カルテの一部(約3カ月)が提出されなかった。その後も提出を繰り返し求めたが、大学側は「捜索中」と答えるばかり。そこで、「カルテ隠ぺい・改ざん」のみを争点として、別に裁判を起こした。

 この裁判で患者側の代理人を務める石川寛俊弁護士は、「隠ぺいだけでなく、提出されたカルテのコピーには改ざんの痕跡がいくつもある」と話しており、徹底的に追及する構えだ。

 石川弁護士らは、カルテ改ざんの実態を明らかにするため、過去に医療過誤裁判に携わった経験のある患者側弁護士700人に、アンケート調査を実施し、今年7月に結果を集計している。それによると、「担当した事件でカルテ改ざんが疑われたり、裁判で認められた例はあるか」という問いに、回答を寄せた96人のうち57人が「ある」と答えている。

 その中には、原告側の“誤解”が含まれている可能性もあるが、決して低くない確率で、医療事故後にカルテ改ざんが行われている可能性があることを調査結果は示唆している。

 患者側弁護士の間では、今後、カルテ改ざんや偽造を争点とした訴訟は増加するとみられている。また、最近の医療過誤訴訟の傾向として、患者側は医療行為そのものの過失と、医師の説明義務違反をセットにして争うようになってきているが、そこに「カルテの改ざん・偽造」による精神的苦痛が加わるケースも増えていきそうだ。それだけに、大阪の「カルテ改ざん裁判」の動向が、他の医療訴訟に与える影響は大きいと考えられる。

 なお、日経ヘルスケア21の12月号(2004年12月8日発行)では、最近の医療訴訟の動向や紛争予防のポイントをまとめた特集記事「病医院を脅かす医療訴訟」を掲載しますので、ご参照ください。
(沖本健二、日経ヘルスケア21

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