2004.11.25

狭心症の非侵襲的治療に新顔が登場、衝撃波用いて虚血部分の血流を改善

 九州大学医学部が開発した、新たな狭心症の治療法が注目を集めている。心臓の虚血部分に衝撃波を照射することにより血管新生を促す「虚血性心疾患に対する体外衝撃波治療」(CSWT:Cardiac Shockwave Therpy)がそれだ(詳細は「日経ヘルスケア21」11月号55ページの記事参照)。

 CSWTは、主に重度の狭心症患者に対する治療法。動物実験による基礎研究を経て、2003年1月からヒトを対象とする臨床研究に入った。既に9人の患者を対象に治療を行い、現在は10人目の治療が進行している。CSWTを開発した九州大学大学院医学研究院・循環器内科学助教授の下川宏明氏は、「重症の狭心症の治療を、身体への負担をかけずにできないかと考えたことが開発のきっかけ」と話す。

 現在、重度の狭心症に対する治療法は、バルーンカテーテルやステントを用いて狭くなった冠動脈を拡げる経皮的冠動脈形成術(PCI)や、問題のある冠動脈を迂回するように他の部位から取った血管を移植する冠動脈バイパス術(CABG)が主流だ。だが、高齢者の場合、侵襲性が高いこうした方法は身体への負担が大きく、安全面での課題が残る。加えて、糖尿病の患者は血管がもろくなっており、PCIやCABGができないケースも少なくない。

 この点CSWTは、外科的な処置を全く伴わない非侵襲的な治療法。人の培養内皮細胞に衝撃波を与えると、VEGF(血管内皮増殖因子)などの複数の血管新生因子が発現するという研究成果をヒントに開発された。心臓専用の衝撃波治療装置を用いて、医師が患者の心エコー画像を見ながら虚血部に狙いを定めて衝撃波を当てる。

 虚血部分1カ所につき200発の衝撃波を、心電図のR波に同期させて照射する。治療1回につき、これを20〜40カ所の患部に当てる。治療にかかる時間は2〜3時間ほどだ。この治療を1週間に3回実施する。痛みはなく、麻酔も不要だ。「患者と話をしながら治療できる。気持ちがいいと、そのまま眠ってしまう患者もいる」(下川氏)という。

 これまでに治療を受けた患者(56〜82歳、男性6人、女性3人)において、個人差はあるものの、全員の症状が改善しているという。「日常生活においてニトログリセリンの舌下錠が手放せないような状態の患者が、治療後はゴルフができるまでに回復したケースもある」(下川氏)。一方で、出血や不整脈などの副作用は、これまで全く確認されていない。

 九州大学病院では現在、CSWTの治療対象患者を、PCIやCABGが受けられない重症患者に限定しているが、理論的には軽度の患者でも対応でき、将来は診療所などで外来の治療も可能になるという。「まずは重症患者での実績を積んで、安全性などを慎重に確認していきたい」と下川氏は話している。
(川崎慎介、日経ヘルスケア21

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